
どうも、nickです。
木曜の音楽レビューの時間です。
今回紹介する楽曲は以下になります。
今回はサミュエル・コールリッジ=テイラー作曲の「24の黒人の旋律集」を紹介していきます。
あまり聞き馴染みのない作曲家ですが、本作品はアフリカ人などの黒人の方々が歌っていた旋律をピアノアレンジした、当時としては画期的なアイディアの作品となっております。
また、作業用のBGMとして聴くのにもピッタリだと思います。
実際に本作品を聴きながらnickはこの記事を書きました。(´ー`)y-~~
それでは紹介に移ります。
作曲者の紹介

サミュエル・コールリッジ=テイラー(Samuel Coleridge-Taylor 1875年 – 1912年)はロンドンに生まれた混血のイギリス人です。
テイラーはアフリカ人の父とイギリス人の母との間に生まれました。
父は、テイラーが生まれてすぐに西アフリカ戻ってしまいました。
そのためテイラーは母親と、母の養父母であるホルマン家で育ちました。
ホルマン家では音楽に触れる機会に恵まれていたため、後に英国王立音楽大学に進学しました。
大学を卒業後、作曲家として評価され、《管弦楽のためのバラード イ短調》がエドワード・エルガーの推薦を得て初演された。
その後、アメリカに渡り作曲家、指揮者として活躍し、「黒いマーラー」と呼ばれるようになりました。
マーラーはこの当時最高峰の指揮者でもあり、作曲家でもあった人物です。

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860年 – 1911年)は、主にオーストリアのウィーンで活躍した作曲家・指揮者。交響曲と歌曲の大家として知られる。“Wikipediaより引用“
また、この頃よりアフリカの音楽に本格的に興味が湧いたそうです。
テイラーは内気な性格でありましたが、指揮にあたっては的確に指示を出していたそうです。
そのため、数々の音楽祭では講師や審査員として引く手あまただったそうです。
また非常に優しい人柄で、自分の出自もあってなのか、とりわけ不運な黒人に親切にしていました。
しかし過労と肺炎により37歳という速さで亡くなってしまいました。
作品の紹介

24の黒人の旋律集(Twenty-Four Negro Melodies, Op.59)は、その名の通り黒人達が歌っていた旋律をモチーフに作曲されたピアノ曲集になります。
具体的にはアフリカの民謡や黒人霊歌を引用しております。
楽譜を見ると元の歌の楽譜も添付されているので、実際に歌われていた歌なのでしょう。
ここで黒人霊歌について触れておこうと思います。
黒人霊歌とは?
黒人霊歌とはそもそもなんなのか?
Wikipediaには次のように書かれております。
霊歌(れいか)、スピリチュアル(英: spiritual)は、アメリカ合衆国で誕生した宗教的な民謡 (folksong) の一つであり、奴隷状態に置かれていた南部のアフリカ系アメリカ人の共同体の中から誕生した固有の宗教歌である。これらの歌は十八世紀後半の数十年間から1860年代の制度的奴隷制廃止のあいだに黒人の共同体の中ではぐくまれ、アメリカ民謡の最も幅広い重要な音楽形態のひとつに発展した。
Wikipediaより引用
具体的には、アメリカに連れてこられた黒人の奴隷が、作業の辛さの気を紛らわせるためだったり、神に祈るために歌われ出したことが、黒人霊歌の原型となっております。
比較的有名な歌である「アメイジング・グレイス」も、元は黒人霊歌です。

また、本作には「アメイジング・グレイス」同様に有名な「深い河(Deep River)」も含まれています。
黒人との混血でありながら比較的恵まれた環境で生活していたテイラーは、実際にアフリカに住んだことは無かったそうです。
ですが、テイラーには何か感じとれるものがあったのかもしれません。
テイラーは他にも、黒人達の旋律を用いた作品を発表しています。
例)アフリカの民謡による交響的変奏曲
アフリカの民謡をモチーフとしているが、どことなくイギリス的(エルガーの影響?)な雰囲気が見え隠れしているようにも聞こえます。
なかなか面白い作品だと思います。
アフリカ的バルトーク?
本作はベラ・バルトークの作品と発想が似ているようにも感じます。
ハンガリーの作曲家であるバルトークは、自国はその周辺の国々を歩いて周り各国の民謡を採取し、自身の楽曲に旋律を引用しておりました。
動画の「ルーマニア民族舞曲」も、バルトークが収集した民謡の旋律を用いています。
推測ですが、バルトークとテイラーは同年代なのでどこかで関わりがあったり、影響を受けることがあったのかもしれません。
ジャズ的な雰囲気?

ピアノソロの曲であることもあってなのか、どことなくジャズの雰囲気を感じられる場面がちらほらあります。
ジャズは黒人音楽を元にして発展していき、そこからさらに細かく枝分かれしていくことになります。
ジャズが一般的なジャンルになるのは、テイラーが亡くなる頃からになります。
テイラーには先見の明があったのかもしれませんね。
オススメの楽曲
24の中からnickがオススメする楽曲を紹介します。
① 4番「彼らは、私に子供を貸しません」
楽譜には南アフリカの歌と書かれております。
クラシック音楽形式の楽曲進行、変奏曲風のアレンジとなっており、西洋音楽とアフリカ民謡との融合がうまくなされた楽曲です。
② 10番「深い河」
黒人霊歌でお馴染みの「深い河」のピアノアレンジ。
ジャズによくみられるブルーノート・スケールのような下降進行や半音が時折みられます。
まだジャズが発展して広まる前の作品であるにも関わらず、こういった音楽的な進行を取り入れられているのが斬新です。
③ 20番「巡礼者の歌」
この曲はアメリカの黒人が歌った曲です。
「巡礼者(Pilgrim’s)」というのはピルグリム・ファーザーズのことで、弾圧を恐れてメイフラワー号に乗り、イギリスからアメリカに渡ったピューリタン(清教徒)たちのことを指します。
ピューリタン達のことを、自分達と重ねているのでしょうか?
物悲しい雰囲気ですが、途中転調して明るくなるところに黒人達の希望の光が見え隠れします。
編曲してみた
面白そうだと思ったので、4番目の「彼らは、私に子供を貸しません」の曲を木管5重奏に編曲してみました。
書いていくと、なんとなくドビュッシーなどの印象派の空気感となる編曲になりました。
本作品はアンサンブルなどの小編成で演奏すると効果がありそうに感じました。
あまり演奏機会が多くなさそうなので、面白いとnickは思います。
まとめ

今回のまとめは次のようになります。
・サミュエル・コールリッジ=テイラーはイギリスに生まれた黒人との混血の作曲家である。
・テイラーは作曲と指揮の2刀流だったことから「黒いマーラー」と呼ばれた。
・テイラーはアフリカの民謡や黒人霊歌の旋律を引用した作品を発表していた。
・黒人霊歌は後のジャズへと発展していく。
・アンサンブルなどに編曲してみると面白そう。
本作品は24曲もの楽曲が納められています。
その中には、皆さんが好きになるような曲が必ず1曲はあると思います。
遥か遠くの故郷に思いを馳せた黒人のご先祖様達の祈りを思い浮かべながら、本作品を聴いてみて下さい。
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