【大人のための中学音楽】実は「一発屋」だった?強敵に阻まれるも「帝王」に見出されたホルストの名曲を解説!

ホルスト
nick hosa
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どうも、nickです。

大人のための中学音楽の回になります。

今回解説するのは、次の曲です。

Holst: Die Planeten ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Hugh Wolff

今回はホルスト作曲の組曲「惑星」を2回に分けて解説していきます。

この曲も、音楽の授業で見たり聴いたりした記憶のある方が多いのではないでしょうか?

1回目である今回は、作曲者の紹介作品の紹介を行います。

作曲者の紹介

グスタフ・ホルスト(Gustav Holst 1874年 – 1934年)はイギリスの作曲家です。

10代の頃から作曲を行なっていたホルストは、1893年にロンドンの王立音楽院に入学しました。

王立音楽院ではトロンボーンも学び、卒業後はオーケストラ奏者として生計を立てていたこともあったそうです。

また、この時に同郷の作曲家であるヴォーン・ウィリアムズと知り合いました。

イングランド民謡の収集で功績も高いヴォーン・ウィリアムズ

※参考 ヴォーン・ウィリアムズについて

ホルストはイングランド各地の民謡や東洋的な題材を用いた作品や吹奏楽曲を多く作曲したことでも知られています。

1905年からはセント・ポール女学校の教師として働くことになりました。

女学校では防音装置を備えた専用の部屋を与えられ、ホルストは音楽教師の仕事をしながら作曲活動を行いました。

1934年に出血性胃潰瘍のためロンドンにて亡くなりました。59歳没。

東洋趣向にハマる

ホルストは1895年ごろからはインド文学に傾倒するなど、東洋の文化に非常に興味をしましました。

そして、古代インドの聖典であるリグ・ヴェーダの讃歌にもとづく合唱曲を発表しています。

Holst Hymn from the Rig Veda No.3.wmv
ハープの伴奏が独特の雰囲気を出しています。

組曲「惑星」も、惑星を題材としているが天文学ではなく占星術から着想を得たものになっています。

占星術は古代バビロニアが発祥。惑星は古代ローマの神々と結び付けられています。

また、日本を題材とした「日本組曲」という曲を作曲しています。

Gustav Holst: Japanese Suite Op. 33 (1915)
「惑星」の作曲を一時中断して書かれた「日本組曲」。日本の民謡が引用されている。

吹奏楽曲の作曲家として

ホルストはオーケストラだけではなく、吹奏楽曲の作曲家としても広く知られております。

ホルストが作曲した吹奏楽作品で、最も有名なものは「吹奏楽のための第1組曲」であります。

Tp159 吹奏楽のための組曲 第1番 ホルスト
歴史的な名曲。この場では語り尽くせない。

また、イギリスではブラスバンド(金管バンド)が盛んであるためか、ブラスバンドのための曲も作曲されています。

Holst: A Moorside Suite, (1928)
全英ブラスバンド選手権大会の決勝における、課題曲として作曲されたムーアサイド組曲。こちらの曲は吹奏楽版もあります。
nick hosa
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nickの中でホルストは、オーケストラの作曲家という印象ではなく吹奏楽やブラスバンドの作曲家である印象の方が強いです。

作品の紹介

ここからは組曲「惑星」の詳細を解説していきます。

実はピアノ曲だった「惑星」

組曲「惑星」は元々はピアノデュオのために作曲されたました。(海王星のみオルガン)

Holst - The Planets, "Mars" for Two Pianos
ピアノ・デュオ版の火星
Holst - The Planets, "Jupiter" for Two Pianos
ピアノ・デュオ版の木星

ですが後に、オーケストラ用に楽譜が書き直されることになりました。

2つの強敵に阻まれた評価

「惑星」初演は、1920年10月10日にバーミンガムにて、全曲を通しての演奏が行われました。

初演当初、「惑星」はそれなりの評価を受けておりました。

しかし同時代の作曲家の作品であるドビュッシーの『海』ストラヴィンスキーの『春の祭典』などと比較するとクオリティが低いとされてしまい、「惑星」はホルストの名とともに忘れ去られてしまいました。

Debussy: La Mer /Leonard Bernsteinn ドビュッシー:交響詩「海」レナード・バーンスタイン
強敵その1の「海」。1905年発表。
Stravinsky The Rite of Spring // London Symphony Orchestra/Sir Simon Rattle
強敵その2の「春の祭典」。1913年発表。
nick hosa
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ドラクエで例えるなら「惑星」がムドー、「海」がデスタムーア、「春の祭典」がダークドレアムですかね。

比較の対象がこの2曲では、発表のタイミングが悪すぎたとしか言いようがありません。

そんなわけでホルストは「一発屋」扱いをされることになってしまいます。

「帝王」によって再評価される

一時忘れ去られてしまった「惑星」でしたが、1961年頃に指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で発表し、レコードを発売したことによって一躍有名となりました。

ホルスト - 組曲《惑星》Op.32 カラヤン ベルリンフィル 1981
「帝王」カラヤンが指揮し、ベルリンフィルが演奏した録音。カラヤンの選曲にしては珍しいように感じるのはnickだけでしょうか?

それ以後、近代管弦楽曲で最も人気のある作品の1つとして知られるようになった。

冥王星という星

かつて惑星の1つに冥王星という惑星がありました。

この惑星は1930年に発見されてから2006年の惑星の新定義の決定によって除外されるまで、76年間にわたり太陽系第9惑星として一般に知られていました。

当時は結構話題になりました。

組曲「惑星」が作曲された当時は、冥王星は未発見だったため組曲内には冥王星は作曲されておりません。

しかし、冥王星発見後ホルストは冥王星の作曲に取りかかりました。

ですが、作曲途中でホルストは脳卒中で倒れ、冥王星の作曲を終えることができずに亡くなってしまいまいした。

ホルストがこの「冥王星」を途中まで作曲していたため、「冥王星」の作曲を別の人が受け継ぎ、組曲に追加しようという試みが起こりました。

そのうち最も有名なのが、ホルストの研究家でイギリス・ホルスト協会理事の作曲家コリン・マシューズによる「冥王星、再生する者」になります。

マシューズ: 冥王星(再生の神)[ナクソス・クラシック・キュレーション #カッコイイ]
マシューズ版の「冥王星」

しかし、2006年8月24日、国際天文学連合総会において惑星の新定義が決定され、冥王星が惑星から除外されることとなってしまいました。

これにより、地球を除いた太陽系の惑星の顔ぶれは、組曲『惑星』の曲目と再び一致することとなりました。

まとめ

今回のまとめは次のようになります。

 

・ホルストはイギリスの作曲家で、女学校の教員をしながら作曲活動を行なっていた

・ホルストは東洋の文化に興味があり、日本を題材にした曲も作曲している

「惑星」は占星術から着想を得た曲だったが、強敵たちのおかげで一時忘れ去られてしまった

・冥王星発見後に追加しようとしたがホルストだったが、曲が完成させられずに亡くなってしまった

 

 「惑星」が一時忘れられた曲であったことは、意外に思う方は多いのではないでしょうか?

次回は「惑星」がなぜ鑑賞教材に向いているのか?と曲の詳しい解説、鑑賞のポイントを解説していきます。


nick hosa
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( `Д´)/ジャマタ

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