どうも、nickです。
ホルストの「惑星」解説の3回目です。
今回は火星、木星「じゃないほう」の惑星たちの解説をしていきます。
あまり触れられることのない惑星たちなのですが、鑑賞の教材として使っても面白い楽曲となっていますので、解説していきます。
火星、木星の解説は、前回の記事をご覧ください。
じゃないほうの惑星たち
「じゃないほう」の惑星たちは、以下の星たちになります。
金星 水星 土星 天王星 海王星
組曲の演奏順に紹介していきます。
金星〜平和をもたらすもの〜
金星は本来、火星を演奏した直後に演奏される楽章です。
火星とは打って変わって落ち着いた雰囲気の曲です。
冒頭とそれ以降に出てくるホルンソロのフレーズが印象的で、ハープも効果的に使われております。
なお金星は英語ではビーナスと呼び、ローマ神話の女神の名が当てられています。
ローマ神話だけでなくメソポタミアでは美の女神イシュタル、ギリシャではアフロディーテなど、金星は各地域の神話の女神の名前が当てられております。
水星〜翼のある使者〜
副題の「翼のある使者」とギリシャ神話におけるオリュンポス十二神の一人で。神々の伝令使のヘルメスを指します。
その印象からなのか、非常にテンポの速い曲となっています。
軽やかにあちこちを飛び回るかのように旋律が折り重なっていきます。
土星〜老いをもたらすもの〜
土星は本来、木星の後に演奏される楽章です。
一定のリズムを刻み続ける伴奏が特徴的です。
かと思いきや、中間部で激しい不協和音が鐘のように鳴り響きます。
その後は、また一定のリズムを刻みながら静かに終わっていきます。
なお、英語で土星をさすサターンの語源となったギリシャの神、サートゥルヌスは農業の神だそうです。
老いをもたらすというのは、農業に従事する方を指しているのだろうか・・・?
さすがに日本的な解釈すぎますかね?
余談ですが、スペインの画家ゴヤはサートゥルヌスを次のように描いています。
結構有名な絵画なので、見覚えがあるのではないでしょうか?
この絵で描かれている老人がサートゥルヌスだそうです。
・・・農業の神?
天王星〜魔術師〜
金管楽器の重く、荒々しいトゥッティから始まる楽章です。
占星術における天王星は、「変革・発明・突発性」という意味も持っているそうです。
そこから転じて、魔術師という名がつけられたのだと思われます。
また、魔術師の副題からの繋がりなのか、どことなくポール・デュカスの「魔法使いの弟子」の影響が感じられます。
4分音符と8分音符の繰り返しのリズムが、デュカスの曲とどことなく似ているように聴こえます。
比較して聴いてみると面白いと思います。
海王星〜神秘主義者〜
海王星は組曲の最後の曲となっています。
全体を通して非常に厳かで静かな楽章となっています。
占星術における海王星は見えないものを示し、その象徴として霊感という意味が当てられています。
霊感からもじって、「神秘主義者」と副題が付けられたのかと思われます。
この楽章の大きな特徴として、この楽章でのみ女声合唱が使用されています。(3:25辺りから登場)
曲の最後も、女声合唱が消えて無くなるまで伸ばし続けるという変わった終わりかたをします。
歌詞を伴わない女声合唱や曲の終わりかたが、宇宙の果てや神秘性を表しているかのではないでしょうか?
チェレスタという楽器
他の惑星を聴いていくと、チェレスタという楽器の使用がとても目立ちます。
火星の冒頭や水星の1:10あたりで聴こえてくる鉄琴のような音を出している楽器になります。
チェレスタは小型のアップライト・ピアノのような形の楽器で、フェルト巻きのハンマーにより、弦ではなく金属音板を叩いて高音域を発生させる楽器です。
開発された当時、発明されたばかりであったチェレスタをチャイコフスキーが旅先のパリ見つけ、この楽器を作曲中の曲で使うことに決めました。
その曲というのは、バレエ音楽である「くるみ割り人形」の中の「金平糖の精の踊り」になります。
この、グロッケン(鉄琴)ともピアノとも言えない独特の音を出すのがチェレスタの特徴になります。
なお、チャイコフスキーはパリからチェレスタを取り寄せる際に楽譜出版社に送った手紙で「他の作曲家、特にリムスキー・コルサコフとグラズノフに知られないように」と書いたというエピソードがあるそうです。
どちらも同世代の超優秀な作曲家なので、ライバルには使われたくなかったのでしょうか?
また、近年の使用例でいうと、ジョン・ウィリアムズが「ハリー・ポッターシリーズ」の第1作、第2作で「ヘドウィグのテーマ」での使用があります。
どちらの例も、この楽器にしか出せない独特の雰囲気を効果的に活用していると思います。
組曲全体の構成について
組曲全体と通してみた時に、各楽章とテンポの関係性は次のようになります。
図のように、木星を中心として対照的なテンポ設定となっています。
中心に位置している木星も、曲単体でテンポ設定をみた時には( )のように対照的となっています。
ホルストが意図的に急と緩を交互になるように、また木星を中心として対象になるようにしたのかは定かではありません。
しかし、当時占星術にハマっていたホルストのことですから、なんらかの意図を持って、このようなテンポ設定にしたのではないかとnickは推測しています。
そう考えると、やっぱり冥王星は足さないほうがよかったんじゃなかろうか・・・
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・「火星」や「木星」以外の惑星にも曲があてがわれている
・どの曲も特徴がそれぞれあり、キャラクターがはっきりと分かれている
・チェレスタという特殊が楽器なよく使われており、その効果が効果的に使われている
・組曲全体を見ると、テンポ設定が対照的になるように仕掛けられている
火星や木星以外の曲も、とてもバラエティに富んでおり、意欲的、実験的な作品が多くて面白いとnickは思います。
今回の解説をきっかけに、他の楽章も詳しく聴いてみていただけるといいと思います。
いかがだったでしょうか?
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( `Д´)/ジャマタ
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