どうも、nickです。
ホルストの「惑星」の解説の2回目となります。
今回は、なぜ「惑星」がよく授業で取り上げられるのか?と、最もよく取り上げられる「火星」と「木星」の詳しい解説をわかりやすくおこないます。
前回の記事を見ていない方は、そちらからご覧になって下さい。
惑星がなぜ鑑賞教材に向いているのか?
なぜ「惑星」の鑑賞が中学校の授業でメジャーなのでしょうか?
nickが考える理由は2つあります。
- 曲の雰囲気がハッキリしており、鑑賞のハードルが低い
- どちらも共通の形式で書かれている
鑑賞のハードルが低い
どちらの曲もメロディーがハッキリしており、曲の雰囲気も真逆であるため比較した鑑賞がしやすいです。
また、後述する理由から曲の展開がわかりやすいため、オーケストラ演奏の鑑賞としてはハードルが低くなっております。
組曲「惑星」は、オーケストラの曲をどのように聴いていいけばいいのか?を説明しながら鑑賞するにちょうどいい曲であるとnickは考えます。
共通する楽曲形式
「火星」と「木星」は、どちらもおおよそ次のような形式で書かれています。
〈前奏+A・B・C・A’・B’・コーダ〉
おおよその楽曲の形式がわかると、オーケストラの曲の鑑賞はグッとわかりやすいものとなります。
この形式の説明が、比較的しやすいため、「火星」と「木星」はよく取り上げられるのではないかとnickは考えます。
「火星」と「木星」の解説
ここからは「惑星」のなかでも、特によく取り上げられる「火星」と「木星」について解説していきます。
それぞれ動画を使って説明していきます。
火星
火星を通して聴くと、↑の動画の通りになります。
まずは「火星」の音楽的な特徴から説明していきます。
「火星」の特徴といえば、5拍子の拍子と繰り返される独特のリズムになります。
この特徴的な拍子とリズムが、1曲を通してずっと繰り返されます。
この発想は、ラヴェルの「ボレロ」に似ています。
この独特のリズムを、しっかりとした土台として曲が展開されていきます。
「火星」場面ごとの解説
ここからは、先ほど書きました〈前奏+A・B・C・A’・B’・コーダ〉の形式ごとに、曲を解説していきます。
「火星」といえばこの特徴的な前奏部分ではないでしょうか?
掴みどころのない暗い雰囲気から曲が始まるところに、副題である【戦争をもたらすもの】の表現しているのかもしれません。
この副題については第一次世界大戦の影響を指摘されることもあるが、作曲者自身は否定しているそうです。
1:30頃より、メロディーらしいメロディーが出てくるAの場面となります。
ユーフォニアムによる有名なソロパートがあるメロディーになります。
曲のちょうど中間点にあたるCの場面で、一旦曲が落ち着きます。
メロディーにはAの場面で使われていたものが使われています。
一見リズムのパートがないように見えますが、形を少し変えて演奏されています。
リズムパートをオーケストラ全体で演奏してから場面が最初に戻ります。
Aの場面とはほぼ同じですが、リズムを演奏する楽器を変えるなどの工夫がみられます。
同じメロディーを使っていますが、全く同じではないので「’」をつけて区別しています。
Bの場面と同じですが、演奏しているメロディーの高さがBとB’では違っています。
同じメロディーを高さを変えて展開するという技術は、バッハが得意とする技術でした。
ここでもバッハが育てて、ベートーヴェンが進化させた技術が使われています。
詳細は過去の記事をご参照ください。
バッハの技術が、現代まで受け継がれていることがわかります。
コーダは曲のエンディングに向けた場面になります。
最後のものすごい大音量(fが4つ!)でリズムのモチーフが繰り返されて、曲が終わります。
木星
木星を通して聴くと、↑の動画の通りになります。
「木星」についてはあまりに有名すぎる中間部の存在があります。
この中間部の詳しい解説は、場面ごとに順を追っていくときに解説します。
「木星」の場面ごとの解説
「火星」とは打って変わり、明るい雰囲気で曲が始まります。
副題の【快楽をもたらすもの】にふさわしい弦楽器の伴奏とリズミックなホルンの動機による前奏になります。
0:29あたりからAの場面となります。
ワルツ風の3拍子となっています。
「木星」といえばこの場面でしょう。
平原綾香さんが、このパートに歌詞をつけて歌ったことは記憶にある方もいるのではないでしょうか?
ホルストの生まれたイギリスにおいても、この場面に歌詞をつけて歌われており、「我は汝に誓う、我が祖国よ」の名前で、イギリスの愛国歌、またイングランド国教会の聖歌として親しまれています。
有名な旋律なのですが、「木星」内ではこの場面でのみ演奏され、長さも1分半程度となっています。
厳密には、この後出てくるコーダの場面で一瞬だけモチーフが使われています。
Aの場面のメロディーが出て来ますが、「火星」の時と同じく高さと演奏する楽器を変えて展開させています。
一瞬だけ前奏で使用したモチーフが出てきます。
これによって、曲の最初に戻って来たかのような効果を使っています。
メロディーの高さを変えたり、演奏する楽器を変えたりして、完全に元に戻ってきてる訳ではないところがミソですね。
こちらもBと同じメロディーを使っていますが、高さと楽器を変えています。
グロッケン(鉄琴)やタンバリンなどの打楽器が印象的です。
ここでは低音楽器とトランペットによる演奏で、Cのメロディーが再現されています。
一旦雰囲気が落ち着いたところで、最後は明るく終わります。
【快楽をもたらすもの】にふさわしいエンディングですね。
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・「惑星」の鑑賞がよく取り上げられるのは、曲の雰囲気や形式のわかりやすさから、鑑賞のハードルが比較的低いからである
・「火星」と「木星」はどちらも同じような場面展開で作曲されている
・バッハが確立し、ベートーヴェンが進化させた作曲技術が、現代まで受け継がれていることが2曲からわかる
曲ごとの共通点や展開のされ方がわかると、実態のない音楽がつかみやすものに感じられるのではないでしょうか?
次回は「火星」と「木星」以外の曲について解説していきます。
いかがだったでしょうか?
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( `Д´)/ジャマタ
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