【死の舞踏】骸骨たちの舞踏会を音楽で描く『死の舞踏』の魅力を徹底解説!【後編】

サン=サーンス
nick hosa
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どうも、nickです。

大人のための音楽鑑賞、「死の舞踏」後編になります。

後編となる今回は交響詩についてと、具体的な楽曲解説をしていきます。

前編をご覧になられていない方はこちらからどうぞ。

交響詩とは?

交響詩とは音楽のジャンルの一つであり、特定の物語や詩的なテーマを音楽的に表現するために作曲された楽曲のことを指します。

交響詩は19世紀から20世紀初頭にかけて、主ににロマン派の作曲家によって盛んに作曲されました。

交響詩には次のような特徴があります。

〈プログラム音楽〉

交響詩はしばしば具体的な物語や詩的なテキストに基づいて作曲されます。

作曲家は、その物語やテキストのイメージや感情を音楽的に表現することを目指して作品を創作していきます。

「死の舞踏」も、後述する詩に基づいて作曲されております。

聴衆は音楽を通じて物語の展開や感情の変化を追体験することができ、より楽曲をわかりやすく理解することができます。

〈一楽章構成〉

オーケストラ作品は通常4〜5つの楽章に場面が分けられております。

ですが、交響詩は1つの楽章で構成されます。

これは1楽章構成にすることによって音楽が連続的に進行し、物語の流れや感情の展開がより自然になる効果があります。

この構成も、より楽曲をわかりやすく理解する手助けとなっています。

〈テーマとバリエーション〉

交響詩では物語やテーマに関連したメロディーが導入され、その後さまざまなバリエーションや変奏が展開されます。

これにより、物語の様々な要素や感情が音楽的に表現され、聴衆は物語の進行に共感や感情移入をしやすくする効果があります。

〈表現の自由度〉

交響詩は物語やテーマによってさまざまなスタイルや雰囲気を取り入れることができます。

作曲家は抒情的な旋律、力強いリズム、劇的な展開などを自由に表現することができます。

この自由度の高さにより、作曲家は個性豊かな作品を生み出しさまざまな音楽的要素を探求することが可能となりました。

楽曲解説

「死の舞踏」の初演は1875年にパリのシャトレ座にて行われました。

しかし初演は失敗に終わってしまいました。

特に、シロフォンによる骨のかち合う表現は悪趣味の極みとの非難を受けました。

ですが、繰り返し演奏されるうちに「死の舞踏」は現在のような好評を勝ち得ていきました。

スコアの冒頭にはフランスの詩人であるカザリスの詩が引用されています。

詩の内容は次のとおりです。

ジグ、ジグ、ジグ、墓石の上
踵で拍子を取りながら
真夜中に死神が奏でるは舞踏の調べ
ジグ、ジグ、ジグ、ヴァイオリンで
冬の風は吹きすさび、夜は深い
菩提樹から漏れる呻き声
青白い骸骨が闇から舞い出で
屍衣を纏いて跳ね回る
ジグ、ジグ、ジグ、体を捩らせ
踊る者どもの骨がかちゃかちゃと擦れ合う音が聞こえよう
静かに! 突然踊りは止み、押しあいへしあい逃げていく
暁を告げる鶏が鳴いたのだ

この詩の内容をもとに、サン=サーンスの「死の舞踏」は作曲されました。

場面ごとに解説

ここからは場面ごとに動画を使って、楽曲を解説していきます。

作品の冒頭では、ハープによって教会の鐘の音が12回打ち鳴らされ、物語の舞台が真夜中の12時であることが示されます。

その後はヴァイオリンがソロを奏でます。

このヴァイオリンのソロは通常は異なる調弦を行い、本来の調弦では難しい不協和音を演奏することを可能としています。

本来のヴァイオリンの調弦
「死の舞踏」におけるソロヴァイオリンの調弦

特にラとミ♭による減五度の音程は「悪魔の音程」とも呼ばれており、このヴァイオリンは死神が弾いていることを表しています。

その後はフルートが怪しげな主題を奏で、ヴァイオリンとチェロがそれに続きます。

「死の舞踏」は主にワルツのリズムによって曲が進んでいきます。

ワルツのリズム

その後は弦楽器が暗く恐ろしい音楽を奏でていきます。

この旋律は「怒りの日」(Dies irae)に基づく旋律となっています。

「怒りの日」の旋律は、特にレクイエムなど死者にまつわる楽曲でよく引用される旋律になります。

「怒りの日」の旋律に導かれた死者たちは次々に墓から現れ、骸骨たちのダンスが始まります。

骸骨の踊りのリズムはシロフォンによって巧みに表現され、それに合わせて様々な楽器が交互に旋律を奏でます。

現在ではよく使われているシロフォンですが本格導入されたのはこの「死の舞踏」が初めてとなっております。

また、こちらの旋律はサン=サーンス自身の別作品「動物の謝肉祭」でも引用されています。

※参考:「動物の謝肉祭」の解説

曲の中盤では、ヴァイオリンソロが再び演奏されます。

この美しい旋律は、恐怖と美しさが融合した特徴的なサウンドとなっています。

曲の終盤では、弦楽器による主題と低音金管楽器による「怒りの日」のテーマが同時に演奏されます。

曲は盛り上がりを見せますが、オーボエによるニワトリの鳴き声とともに夜が明ける様子が突然に描かれます。

そしてヴァイオリンのソロとともに死者たちは墓に戻り、舞踏会は終わりを告げます。

最後に全曲聴いてみよう!

これまでの解説を踏まえて「死の舞踏」を最初から最後まで聞いてみましょう!

まとめ

「死の舞踏」はプログラム音楽の一つであることから、音楽とテーマの結びつきや音楽が物語をどのように表現するかについて学びやすいというメリットがあります。

また「死の舞踏」は中世のモチーフを取り入れた作品であり、その背後には当時の宗教的信念や社会的状況が反映されています。

この作品を鑑賞することで、中世ヨーロッパの文化や歴史に触れ、理解を深めることができます。

ダイナミックでわかりやすい作品である「死の舞踏」は聴覚的な鑑賞力を高めるよい楽曲であるといえます。

皆さんも「死の舞踏」をきっかけに中世ヨーロッパの文化に触れるとともに、クラシック音楽に対する理解を深めていってください。


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いかがだったでしょうか?

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( `Д´)/ジャマタ

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