どうも、nickです。
大人のための音楽鑑賞、シェエラザードの回です。
後編となる今回は「シェエラザード」という作品についての解説と鑑賞のポイントを紹介していきます。
作品について
交響組曲『シェエラザード』はリムスキー=コルサコフが作曲した交響組曲になります。
この楽曲はアラビアンナイトの語り手であるシェエラザードの物語をテーマとしています。
『シェエラザード』作曲の頃のリムスキー=コルサコフは、全生涯のうちで最も作曲意欲が湧き上がっていた時期でありました。
『シェエラザード』は『スペイン奇想曲』、『ロシアの復活祭』序曲といった彼の代表作に続いて1888年に完成したとみられております。
『シェエラザード』は同年中にサンクトペテルブルクの交響楽演奏会にて初演されました。
日本での初演は1925年に行われ、「日露交歓交響管弦楽演奏会」にて、山田耕筰指揮の日露混成オーケストラによるものが初演と見られている。
この演奏会で指揮者を務めた山田耕筰は、「赤とんぼ」の作曲でも有名です。
※参考:山田耕筰と「赤とんぼ」について
アラビアンナイトとは?
アラビアンナイトとはイスラム世界における説話集で「千夜一夜物語」とも呼ばれます。
原型は9世紀ごろに成立し、18世紀ごろにフランス語に翻訳されて出版されたことを機に、世界中で翻訳されて有名となりました。
中でもアラジンと魔法のランプやシンドバッドの冒険、アリババと40人の盗賊のエピソードが特に有名です。
ですが、これらの話はのちにヨーロッパ人が追加したエピソードで、元々のアラビア語の写本には存在しない話であることがわかりました。
物語のあらすじ
シェエラザードの物語のあらすじは次のとおりです。
シャフリアール王は彼の一番目の妻の不貞を発見した怒りから、妻と相手の奴隷の首をはねて殺害する。 女性不信となった王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝には処刑していた。側近の大臣が困り果てていたとき、大臣の娘のシェエラザードは王の愚行をやめさせるため王との結婚を志願する。 シェエラザードは毎晩命がけで、王に興味深い物語を語る。そして物語が佳境に入った所で「続きはまた明日。」と話を打ち切る。 王は新しい話を望んでシェエラザードを生かし続け、千と一夜の物語を語り終える頃には二人の間には子どもが産まれていた。王は自分とシェエラザードの間に子供が出来たことを喜び、シェエラザードを正妻にする。こうしてシェエラザードは王の悪習を終わらせた。
このシェエラザードが毎夜ごとに話す物語をオーケストラ演奏で表現された楽曲が、今回解説する「シェエラザード」になります。
なお、王の悪習を止めさせたとする筋書きも、後にヨーロッパ人が追加したものだそうです。
トレンドだった異国物
シェエラザードが作曲された当時、ヨーロッパでは植民地政策の影響でアジアやオリエントなどの文化が多く流入してきました。
また万博の影響もあり、19世紀のヨーロッパでは芸術や文学の分野で「異国物」がブームとなっていました。
ここではいくつか例を紹介します。
こちらはスペインのアンダルシアが舞台となっております。
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こちらは当時イギリス領であったインドが舞台となっています。
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こちらは日本の長崎を舞台としたオペラになります。
鑑賞のポイント
ここからは「シェエラザード」第2楽章における鑑賞のポイントを解説していきます。
「シェエラザード」鑑賞のポイントは大きく3つになります。
- ライトモチーフと呼ばれる技法
- 2つのライトモチーフ
- 2つの異なる性格の主題
ライトモチーフと呼ばれる技法
ライトモチーフとは楽曲中において特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や旋律のことをいいます。
単純な繰り返しではなく、和声を変えたりや別のライトモチーフと組み合わせるなどして変奏・展開されることによって、登場人物の行動や感情、状況の変化などを表現します。
「シェエラザード」ではこのライトモチーフの技法が用いられています。
ライトモチーフの例
特定の人物にひも付けられた主題の例として、映画「スター・ウォーズ」における「ダース・ベイダーのテーマ」があげられます。
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また、ミュージカル「オペラ座の怪人」におけるファントムのテーマもわかりやすい例です。
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特定の人物とひも付けるという点においては、プロレスラーの登場曲もある意味ライトモチーフの応用ともいえるでしょう。
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2つのライトモチーフ
では「シェエラザード」ではどのようなライトモチーフが使われているのでしょうか?
「シェエラザード」では次の2つのライトモチーフを使って楽曲が展開されていきます。
- シェエラザードのモチーフ
- カランダール王のモチーフ
シェエラザードのモチーフ
ヴァイオリンのソロで奏でられるこの旋律はシェエラザード本人を示した旋律になります。
この旋律がさまざまな場面の合間に挿入されることにより、彼女が毎夜ごとにエピソードを語っている姿を表現しています。
なお、このシェエラザードのモチーフは他の楽章でも使われており、全曲を通して彼女がエピソードを語っている様子がうかがえます。
カランダール王のモチーフ
カランダールとは諸国行脚の苦行僧のことで、特定の個人を表す言葉ではありません。
彼らは元はどこかの国の王子だったそうです。
旋律もどこかオリエンタルな雰囲気を感じられるものとなっており、当時の流行を追ったものであることがわかります。
2楽章は彼らの物語が中心となっているため、後に紹介する2つの主題の合間にたびたび演奏されます。
2つの異なる性格の主題
2楽章は2つのライトモチーフの他に2つの異なる性格の主題が交互に提示されて曲が展開していきます。
- ファンファーレ風の主題
- クラリネットとファゴットによる主題
ファンファーレ風の主題
この主題は主にトロンボーンとトランペットで演奏されます。
ファンファーレ風の旋律となっており、他の旋律と比較してとても荒々しく力強い印象を受けます。
クラリネットとファゴットによる主題
こちらの旋律はシェエラザードのモチーフを模したような旋律となっております。
これら2つのライトモチーフと2つの主題が変わるがわる展開して、2楽章は進んでいきます。
最後に2楽章をまとめて聴いてみよう!
以上のことを踏まえた上で、最後に「シェエラザード」2楽章を通して聴いてみましょう。
まとめ
シェエラザードは中学校の教科書にも鑑賞教材として載っており、鑑賞のポイントを押さえればとても聴きやすいオーケストラ作品であります。
全曲版の演奏も載せておきますので、ぜひ4楽章全て鑑賞してみて下さい。
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いかがだったでしょうか?
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( `Д´)/ジャマタ
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