【大人のための中学音楽】なぜヴィヴァルディの「春」が教材として選ばれたのか?nickが解説します!

ヴィヴァルディ
nick hosa
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どうも、nickです。

今回は大人のための中学音楽と題しまして、皆さんが中学校のときに見た、聞いてであろう楽曲について数回に分けて解説していきます。

一般の方だけでなく、音楽教員の方にも教材研究の参考にしていただけたら幸いです。

今回解説するのはこちらの作品です。

Vivaldi, The Four Seasons, Spring (La Primavera), 1st movement

今回はヴィヴァルディ作曲の四季より「」を解説していきます。

度の人でも聞いた覚えがあるかと思いますが、いったいどんな曲だったのか?覚えていない方もいらっしゃるかと思います。

本記事では作曲者の紹介と、この曲の功績なぜこの曲を鑑賞するのか?について解説していきます。

ヴィヴァルディって何者?

作曲者のヴィヴァルディは1677頃に生まれ、1741に亡くなったイタリアの作曲家です。

音楽家であった父からヴァイオリンの手ほどきを受け、後にサン=マルコ大聖堂のヴァイオリン奏者としても活躍しました。

現在のサン=マルコ大聖堂

そんな彼は生前、2つの顔を持っていました。

赤毛の司祭

ヴィヴァルディは25歳のときに教会の司祭となりました。

髪が赤かったため「赤毛の司祭」と呼ばれていたそうです。

しかし、ぜんそくの症状ためミサを執り行うことはほとんどなかったそうです。

女子慈善孤児院の先生

ヴィヴァルディはヴァイオリン演奏や司祭の仕事のかたわら、当時4つあった慈善養育院のうちの1つである、女子慈善孤児院の教師としても働いていました。

その孤児院でヴィヴァルディは、子どもたちにオーケストラ合奏の指導することになりました。

孤児院の子どもたちによるコンサートは評判が非常に良かったそうで、孤児院の運営をコンサートの収益でほとんど賄えるほどだったそうです。

ヴィヴァルディが作曲した曲のほとんどは、この孤児院で演奏するためのものでした。

「春」について

この曲はヴィヴァルディが1725年に作曲したヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』うちの 第1から第4曲、「春」「夏」「秋」「冬」のうちの1曲である。

ここではこの曲の音楽史上の功績と、なぜこの曲が中学1年生で鑑賞する題材として選ばれているのかについて解説します。

音楽史上の功績は?

この楽曲の音楽史上の功績は2つあると考えます。

功績①協奏曲の原型である

この曲は独奏ヴァイオリンとその他の楽器とが交互にメロディを受け持つ形式となっています。

ヴィヴァルディはこのような形式の曲を600曲近く書きました。

この形式は、後の協奏曲(コンチェルト)に繋がっていきます。

モーツァルト クラリネット協奏曲 イ長調K.622 第1楽章 Allegro

クラリネットが完全にフィーチャーされていますが、伴奏のオーケストラが目立つ部分もちゃんとあると思います。(前奏と間奏、後奏)

協奏曲は現在でも演奏されており、オーケストラの入団オーディションや演奏会のプログラムにも使用されております。

これは、ヴィヴァルディが「春」のような曲を大量に書いてくれておかげなのです。

功績②ロマン派音楽の祖先

この曲は場面ごとにソネットという短い詩が添えられている。

この試みは当時としては珍しいものでした。

しかし、このアイディアは後のロマン派音楽交響詩の考えにつながる。

交響詩とは、物語や現実世界の風景などを音楽で表現した楽曲のことを指します。

交響詩で最も有名なものは、P.デュカスの「魔法使いの弟子」かと思います。

Paul Abraham Dukas - Sorcerer's Apprentice

ディズニーのファンタジアで使われた曲ですね。

この曲は、ゲーテの詩の内容を音楽化したものになります。

「魔法使いの弟子」の作曲は1897年になります。

ヴィヴァルディはこのアイディアを200年以上も先取りした形になります。

なぜこの曲を鑑賞するのか?

ではなぜこの曲を授業で聴かなければならないのか?

そう思われた方は多いのではないかと思います。

nickが考える理由は3つあります。

理由①パート数が少ないから

「春」は現代のオーケストラ作品と比較すると、とても少ないパート数となっています。

こちらが「春」の楽譜
こちらは比較的最近作曲されたラヴェルの「ボレロ」の楽譜

「春」は弦楽器のみの7パートなのに対して、「ボレロ」は管楽器、弦楽器、打楽器合わせて30パート以上になります。

パートの聞き分けや楽譜の解読には結構な訓練が必要なため、パートと楽器の数が少ないこの時代の楽曲が選ばれたんだと思います。

理由②曲の作りが簡素であるから

この楽曲は独奏ヴァイオリンのソロ部分と伴奏楽器の合奏部分とが交互に現れます。

これはリトルネッロ形式と呼ばれております。

ソロの後には合奏がくる、合奏の後にはソロがくる。

ほぼ確実にこのような展開となっており、先が予想しやすいという利点があります。

先が予想しやすい曲のほうが聞きやすくなりますので、オーケストラ鑑賞の導入としては適切な教材になると思います。

なお、リトルネッロ形式は後にロンド形式へと変わっていくことになります。

理由③旋律に対して詩が添えられているから

音だけでなく言葉によるガイドがあることで、オーケストラの演奏は聴きやすくなります。

功績②のところでも話しましたが、この曲は詩の内容に合わせて音楽的展開を変えていくという構成なっております。

近代の曲には詩や文章が添えられた楽曲もありますが、パート数が多く、曲だけでなく詩の内容が難解な楽曲も多く存在します。

例として、ドビュッシーが作曲した「牧神の午後への前奏曲」の元になった詩と楽曲を載せます。

かのニンフたち 永遠の命を生きよ

かくも晴れやかに
その軽やかな肉体は 
眠気を誘う空気の中を漂う

私は夢に耽っていたのか?
古代の夜が堆積したこの疑問は
幹をそのままにして 夥しい方向に枝分かれする 
そして私が自分自身に 勝利の徴に
偽りのバラ色の理想を捧げたというのだ

さあよく考えてみよう

いっそお前を囲むニンフたちが
伝説の中のお前の欲望そのままならよいのに!
フォーヌよ 青くて冷たい乙女の目から
涙に咽んだ純潔な泉のような乙女の目から幻がほとばしる
もうひとりの乙女がつくため息は
私の毛の中を吹き渡る暖かい風のようだとお前はいう

いやいや!重苦しい陶酔の中では
朝の冷たい大気も熱にあえいで
小川の水にせせらぎの音を立てさせることもできぬ
ただ私の笛の音が林の中をこだまするのみだ 
その笛の二つのパイプからは風が漏れ出て
心無い雨の中で音を響かす
それは さえぎるもののない地平線のあたりで
インスピレーションが空と溶け合う
澄みわたった人工の息吹だ
Debussy: Prélude à l’après-midi d’un faune ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Andrés Orozco-Estrada

非常に掴みどころのない曲想に対して難解な詩。(しかもちょっとエロい)

「牧神の午後への前奏曲」は音楽史上たいへん重要な傑作であるには間違いないのですが、中学1年生の鑑賞題材としては不適格であるかと思います。ちょっとエロいし・・・

それに対して「春」に添えられた詩はこのようなものになります。

春が陽気にやってきた。
鳥たちが楽しい歌で挨拶をする。
春の到来を告げる風が泉に吹きかけると、
どの泉も優しくささやき流れ出す。
黒い雲が空を覆い、
春を告げるために選ばれた稲妻と雷鳴がやってくる
その後、静まると、
小鳥たちは魅力的な鳴き声とともに戻ってくる。

どうでしょうか?内容も短く、内容もすんなりイメージ出来るのではないでしょうか?

オーケストラ鑑賞の導入としては、こちらの方が適切であるとnickは考えます。

今回のまとめ

「春」は中学1年生の最初の鑑賞の授業に取り上げられることが多いと思います。

オーケストラ鑑賞のスタートラインとして、パート数の少なさ、詩と楽曲のシンプルさでこの曲が鑑賞教材に選ばれたんだとnickは思います。

この曲の鑑賞をきっかけに、クラシック音楽の鑑賞を3年間でより深めていく狙いがあるのだとnickは思います。

解説が長くなってしまったので、今回はここまでにします。

次回は「春」の音楽的な内容に迫っていきます。


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( `Д´)/ジャマタ

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