どうも、nickです。
大人のための中学音楽鑑賞の時間です。
今回からはこちらの楽曲について解説していきます。
今回からレスピーギ作曲の交響詩「ローマの松」を、2回に分けて解説していきます。
本作品は教科書ではあまり大きく取り上げられていませんが、要点を押さえれば非常に理解しやすく聴きやすい作品だとnickは思います。
なので、一般の方だけでなく現職の音楽教員の方にも参考になる記事になると思います。
それでは解説していきます。
作曲者の紹介
オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi, 1879年 – 1936年)は、イタリアの作曲家です。
1908年まではヴァイオリン、またはヴィオラ奏者して活動していましたが、その後は作曲に転向しました。
レスピーギがロシア帝国劇場管弦楽団の首席ヴィオラ奏者を務めていた時、ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフから作曲の指導を受け、その精緻な管弦楽法に強い影響を受けました。
ロシア5人組と、コルサコフについては過去の記事をご参照ください。
レスピーギは1913年にローマにあるサンタ・チェチーリア国立アカデミアの作曲科教授に任命されてローマに移住することとなりました。
以後は同アカデミアで後進の育成と古楽の研究に力を注ぎました。
レスピーギは1936年までは作曲を続けていましたが、その後は病気のため作曲が続けられなくなってしまいました。
そして、同年4月18日に心臓病のため亡くなりました。
主な作品
レスピーギは、現在も演奏される管弦楽曲を作曲したイタリア人作曲家という少し珍しい方になります。
イタリア人のクラシック作曲家は、ヴェルディやプッチーニなど、オペラの作曲で有名な方が多いです。
レスピーギは、吹奏楽コンクールでしばしば演奏されている「ローマの祭り」や「シバの女王ベルキス」の作曲者として有名です。
またレスピーギは、16世紀から18世紀の音楽に対する関心から、古楽に基づく作品をたくさん残しました。
その代表的な作品として、「リュートのための古風な舞曲とアリア」という曲があります。
この曲は、レスピーギがサンタ・チェチーリア音楽院教授を務めていた頃、同図書館に保存されていた古い時代の楽曲の旋律を用いて作曲されました。
そして、今回解説する「ローマの松」にも、古い時代の楽曲の旋律が引用されています。
楽曲について
今回解説する「ローマの松」は交響詩というクラシックのジャンルになります。
交響詩とは?
交響詩とは標題音楽の1種で、風景や場面、物語を音楽で表現された楽曲のことを言います。
簡単に言いますと、風景や物語など、音楽以外のものを音楽で表現しようとする試みになります。
以前解説したスメタナの「モルダウ」も交響詩でした。
詳しくはそちらの記事も参照ください。
なお、ただ単に音を並べたり組み上げたりなどして、純粋に「音」を表現する考えのことを絶対音楽と呼びます。
モーツァルトやベートーヴェン(一部例外あり)の交響曲が絶対音楽にあたります。
「ローマ3部作」について
「ローマの松」はいわゆる「ローマ3部作」のひとつとして作曲されました。
の3作品は、作曲された順に次の通りです。
・ローマの噴水
・ローマの松
・ローマの祭り
ローマの噴水
ローマの噴水(1916年)は「夜明け」、「朝」、「真昼」、「黄昏」の時間帯と、ローマの名所4箇所の噴水(ジュリアの谷、トリトン、トレヴィ、メディチ荘)が当てはめられています。
その艶やかな楽曲構成は、作曲の師匠であるリムスキー=コルサコフの強い影響が見られます。
初演の際の評判はあまり良くなかったそうですが、再度行った公演が大成功したことによって有名な曲となりました。
ローマの松
今回紹介するローマの松は、1924年に作曲された「ローマ3部作」2作目の作品になります。
レスピーギはみずから指揮してこの曲を演奏するにあたり、プログラムに次のように記しています。
『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすために出発点として自然を用いた。極めて特徴をおびてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人となっている。
このことから、この曲は単に松のことを描こうとしたわけではなく、松という自然を通して過去のローマの風景に迫ろうという意図をもって作曲されたことがわかります。
また「ローマの松」は、ディズニーの映像作品「ファンタジア2000」でも取り上げられました。
なお、本作で題材となっている松は、イタリアなど地中海沿岸を中心に自生するイタリアカサマツのことになります。
ローマの祭り
ローマの祭り(1928年)は古代ローマ時代(チルチェンセス)、ロマネスク時代(50年祭)、ルネサンス時代(十月祭)、20世紀(主顕祭)の時代にローマで行われた祭りを、オーケストラで描いた楽曲になります。
他の2曲に比べると、非常に派手な曲となっているのが特徴です。
オーケストラではあまり演奏される機会がないのですが、吹奏楽に編曲されたびたびコンクールで演奏されているので、耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・レスピーギはオペラではなく、交響曲作品で有名になったイタリア人作曲家としては珍しい人物である
・レスピーギの作品には中世の曲を題材にした曲が多く、ローマの松でもその旋律が使用されている
・ローマの松は「ローマ三部作」の2作目にあたり、松を通して過去、現在のローマの風景を描いた作品である
ローマの松は今まで解説してきた楽曲に比べるとマイナーな作品だと思います。
しかし、楽曲は大変聴きやすく、わかりやすい楽曲であると考えているので、nickはこの曲を授業で取り扱うべき作品だと考えています。
それを踏まえた上で、次回はローマの松の鑑賞のポイントなどについて解説していきます。
※他の音楽鑑賞の解説はこちらからどうぞ
コメント