どうも、nickです。
「展覧会の絵」の解説の2回目です。
2回目の今回は、鑑賞のポイントをガルトマンが実際に描いた絵と一緒に解説していきます。
前回をご覧になっていない方は、こちらからご覧になってください。
押さえるべき3つのポイント
「展覧会の絵」を鑑賞する上でのポイントは、次の3つになります。
① 絵画と楽曲の関係性
② プロムナードの効果
③ ピアノ版との比較
絵画と楽曲の関係性
本作品は11種類の絵画の印象や世界観を音楽で表現してまとめたオーケストラ作品です。
これらの絵画をさまざまな方法で作曲されているため、とてもバラエティーに富んだ作品となっています。
一種の組曲とも言えるかもしれません。
また、絵の世界観や印象を音楽で描くという点は、交響詩の考え方に共通しています。
ここでは、ガルトマンが描いた絵画と楽譜の動画と合わせて解説していきます。
交響詩については、スメタナの回で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
プロムナードの効果
「展覧会の絵」ではプロムナードという短い曲が、各曲の間に挿入されています。
このプロムナードには、鑑賞者が絵画の世界と現世を行き来しているという心の内面が表現されています。
これにより、楽曲を通して統一感をもたらし、1つの大曲として機能させる効果があります。
ロンド形式の応用系とも言えますね。
ロンド形式と異なる点は、演奏されるプロムナードに毎回の変化があることです。
これは、絵画を見ることで、鑑賞者の気持ちが変化していくを様子を表現しているのだと思われます。
微妙に変化していくプロムナードのメロディーに注目してみてください。
ピアノ版との比較
「展覧会の絵」は元々はピアノソロの楽曲でしたが、「ボレロ」の作曲でお馴染みのラヴェルによって、オーケストラ作品へと編曲がされました。
ピアノ版との比較も、「展覧会の絵」という曲を知る上で大切な要素となります。
このピアノ版とオーケストラ版で表現にどれだけの差があるのか?
また、ラヴェルがどんな工夫をしているのか?
これらが鑑賞のポイントとなります。
ピアノ版との詳しい比較は次回おこないます。
順番に聴いてみよう
それでは、展覧会の絵で演奏される曲を、ガルトマンの絵画と動画で順番に聴いていきましょう。
プロムナード
最初に演奏されるプロムナードは、有名なトランペットソロから始まります。
一般的にこのプロムナードは鑑賞者の心情の変化を表現していると考えられており、展覧会の巡回者、すなわちムソルグスキー自身の歩く姿を表現しているとされています。
プロムナードは、各曲の合間に挿入されています。
曲間に挿入されるプロムナードは最初のプロムナードと全く同じではなく、転調していたり、演奏される楽器を変えるなどの工夫がなされています。
楽譜を見ると拍子がころころ変わっていますが、あまりそれを感じさせないフレージングとなっています。
小人(グノーム)(+プロムナード)
グノームとは、一般的にはノーム(英: Gnome)と呼ばれる精霊や妖精のことを指します。
彼らは主に地中で生活しており、鉱石の場所などにも詳しいとされております。
地中深くに住んでいるとされる彼らの様子を、不気味な低音の連符で、鉱石の光や掘り起こしている様子を高音の跳躍で表現しています。
グノームの後には、短いプロムナードが挿入されています。
古城(+プロムナード)
この曲では、オーケストラでの使用が珍しいサックスがメロディーで使われています。
また、1曲を通してベースラインが1つの音から動かないため、よりメロディーラインが目立つ作りになっています。
古城の後にはプロムナードが挿入されています。
チュイルリーの庭
チュイルリー17世紀から19世紀まで使用されていたフランスもパリにあった宮殿の名前になります。(隣にはルーブル美術館があります)
もとになった絵は、ガルトマンがフランスに留学中にそこで遊ぶ子供たちを描写した絵がモチーフになっているそうです。
現在こちらの庭は子ども達やその親たちの憩いの場として親しまれています。
子供たちがワイワイと遊んでいる様子が描かれています。
ヴィドロ(牛車)(+プロムナード)
「ヴィドロ」とはポーランド語で牛、または牛が牽く荷車のことを言います。
また、それ以外の意味に「家畜のように虐げられた人々」という意味があるそうです。
遺作の絵には牛は描かれていないため、後者の意味で使用されていると思われます。
この曲の旋律には、これもオーケストラでは使用が珍しいユーフォニアムが使われています。
卵のからをつけたヒナの踊り
この作品の原画は、バレエ《トリルビ》の衣装デザインがモチーフとなっています。
ひなどりの鳴き声と小刻みな動きが木管楽器と弦楽器の短い音で表現されており、とてもユーモラスな楽曲となっています。
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
絵画の左側がサムエル・ゴールデンベルク、右側がシュムイレとなっています。
この組曲が書かれた当時のサンクト・ペテルブルクでは、サムエル・ゴルデンベルクは裕福なユダヤ人の典型的な名前であり、一方、シュムイレは貧しいユダヤ人の典型的な名前であったとされています。
「ふたりのユダヤ人~太った男と痩せた男」という副題もついており、前半と後半で2人の人物を、2つのメロディーで巧みに書き分けがされています。
リモージュの市場
リモージュは、フランスの中部に位置する都市になります。
こちらはガルトマンの絵はスケッチのみが残されています。
市場で見た人たちを書いたのでしょうか?
この曲ではリモージュの市場に集まった女性達の会話や、行き交う人々の様子が細かい音符や、素早く動く連符表現されています。
カタコンベ
カタコンベとは3、4世紀のローマやその周辺地方の地下墓地のことを言います。
この曲は極端な音の強弱によって、広く薄暗い石造りの墓地の様子が表現されています。
死せる言葉による死者への呼びかけ
こちらの曲はプロムナードのメロディーを少し変形させた楽曲となっています。
プロムナードは、絵を鑑賞している人の心の変化を表現していると、先ほど説明しました。
このことから、死者に呼びかけているのは鑑賞者であると推測できそうです。
鶏の足の上に建つ小屋 (バーバ・ヤガー)
こちらの絵は、スラヴ民話に登場する魔女「バーバ・ヤガー」が住んでいるとされている家を描いた絵になります。
バーバ・ヤガーの住む家のことを、鶏の足の上に建つ小屋と呼ぶそうです。
この鶏の足の上に建つ小屋とは高床式の家屋のことらしく、スカンジナビア半島北部やロシア北部の先住民族が使っていた倉庫がモデルだそうです。
曲の荒々しいさやユーモラスな主題は、小屋の奇妙さや魔女のグロテスクさの両方を表現しています。
キエフの大門
上の絵はキエフ市に再建される予定だった門のデッサンに基づいています。
建築家ガルトマンの代表作になるはずだった門でしたが、彼はその完成はおろか着工の瞬間も見ることがなく亡くなってしまいました。
曲の後半部分は、昔テレビ番組であった「ナニコレ珍百景」で使われていたので、この部分だけなら覚えている方は多いのではないでしょうか?
最後の曲にふさわしく壮大なサウンドで楽曲が閉じられます。
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今回のまとめは次のようになります。
・「展覧会の絵」鑑賞のポイントは、絵画との関係、プロムナードの効果、ピアノ版との比較の3つがある
・「展覧会の絵」は11作品もの絵画を音楽で現した楽曲で、組曲形式で多種多様な曲を聴くことができる
・プロムナードには、多種多様な曲たちを1つに繋げて統一感をもたらす効果がある
・ユーモラスな曲が多い「展覧会の絵」の中の楽曲には、テレビのなどのメディアで使用されている曲もある
「展覧会の絵」は1曲1曲が短いため、通して聴いても飽きずに聴けるだけではなく、1曲づつ別々に聴いても聴きやすいです。
そのために、音楽鑑賞の授業の教材として使われているのだとnickは考えます。
みなさんはどの曲が好みでしょうか?
次回はピアノ版との比較について語ります。
※他の音楽鑑賞の解説はこちらからどうぞ
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