どうも、nickです。
大人のための中学音楽「夏の思い出」の第2回目です。
今回は楽曲の詳しい解説と、歌唱上の解釈についてお話しします。
前回をご覧になっていない方は、そちらからご覧になってください。
曲の特徴
曲の特徴としては大きく2つあります。
- 歌いやすい曲である
- 曲の解釈がしやすい
歌いやすい
「夏の思い出」は、まず何よりも生徒にとって歌いやすい歌であることが特徴です。
特に、変声期をむかえる男子生徒にとっては、音域が高すぎず低すぎずのラインとなっております。
生徒にとって歌いやすい歌であることは、歌唱教材においては絶対条件となります。
曲の解釈がしやすい
詳しくはこれから解説していきますが、「夏の思い出」は歌詞や記号、コード進行から楽曲への解釈が比較的しやすい曲であります。
楽曲の解釈というと何だか難しそうに感じるかもしれませんが、中学生に説明しても理解してもらえるほど作曲者は丁寧な作曲をしております。
楽譜上の解釈について
ここからは、楽譜の元にどのように解釈をして歌うべきなのかを解説していきます。
「夏の思い出」を理解する上で押さえておくべきポイントは、次の2つになります。
- 強弱記号
- コード進行
この2つを頭に入れながら、読み進めていってください。
「きりのなか」のp
歌い始めはmp(メッゾ・ピアノ)でしたが、「きりのなかに〜」からはp(ピアノ)となっています。
なぜここの強弱記号はpなのでしょうか?
ここの歌詞では、霧の中から見える人影と小道について描かれています。
そのため、ぼんやりとして風景を表現したいためにpが書かれているのだと解釈ができます。
この強弱記号によって歌詞で描かれている風景を表現する方法は、「夏の思い出」ではよく使われております。
「やさしいかげ」のクレッシェンド、デクレッシェンド
「やさしいかげ」の小節にはクレッシェンド(だんだん強く)とデクレッシェンド(だんだん弱く)が書かれています。
これはなぜなのでしょう?
1つは、影が浮かんで消える様子を表現するために書かれたのがと思います。
もう1つは和音進行が関係しております。
クレッシェンドの頂点となる3拍目の和音には増三和音と呼ばれる和音が使われています。
増三和音は少し歪みを発生させる和音なので、必然的にクレッシェンドがかかる効果があります。
また、デクレッシェンドは影が消えていく様子や、フレーズの終わりに向かっていく効果を狙っています。
このように、2つの理由から、この場面ではクレッシェンド、デクレッシェンドが書かれているのだと推測します。
「さいている」のpp
「さいている」のところにはpp(ピアニッシモ)が書かれています。
この記号の意味は「とても弱く」になります。
ここにppを書くことによって、どのように水芭蕉の花が咲いているのかが推測できます。
おそらくですが、あたり一面に咲いているのではなく、ポツポツとひっそりと咲いているのではないでしょうか?
あたり一面咲いているのであれば、f(フォルテ)やff(フォルティッシモ)が使われるのではないでしょうか?
これは2番の歌詞でも同様だと考えます。
水芭蕉の花がどのように匂っているのか?
ppなので、強い匂いではなさそうであることが推測できます。
「みずのほとり」のテヌート
「みずのほとり」のところにはテヌートが書かれています。
テヌートの意味は「音の長さを十分に保って」になります。
テヌートは主に、短くなって欲しくない音や丁寧に演奏してほしい音にかかれることが多いです。
またこれらの理由から、軽くリタルダンドをかけてもいいのではないかと思います。
しゃくなげ色とは?
夏の思い出の後半に「しゃくなげ色」というフレーズがあります。
しゃくなげ(石楠花)とはツツジ科ツツジ属の低木の花の名前になります。
しゃくなげの花には白や赤、黄色などの色が見られるそうですが、ここでは赤い色のことをシャクナゲで表現されています。
なぜなら、歌われている時間が夕暮れ時だからです。
たそがれ(黄昏)とは夕方のこと指します。
なので『夏の思い出』の歌詞にある「しゃくなげ色に たそがれる」とは、夕焼けの赤い色を表していると考えられる。
フェルマータへのクレッシェンド
後半部分の「はるかなおぜ」のフレーズにはクレッシェンドが書かれています。
なぜここにクレッシェンドが書かれているのでしょうか?
1つは、終わりに向かっていく効果を狙って書かれているという点になります。
もう1つは、コード進行上自然とクレッシェンドがかかるという点になります。
この場面のコード進行は、通常であればDからBmに進むのですが、BmではくB7に進んでいます。
BmをBにすることで、曲の盛り上がり方に大きな差が生まれます。
参考)D→BmとD→B7のコード進行による比較
この後の展開をより強く印象付けるために、作曲者はBmではなくB7の和音を採用したのだとnickは考えます。
「とおいそら」のp
曲の最後となる「とおいそら」の部分の曲弱記号はpとなっています。
先ほどのフレーズでせっかく盛り上がったのに、なぜpにしたのでしょうか?
「夏の思い出」で描かれている尾瀬の風景は、記憶の中の風景になります。
なので、ハッキリとしないおぼろげな記憶なのではないでしょうか?
そういった記憶の中の尾瀬の風景であることを印象付けるために、作曲者はpを書いたのではないかと推測します。
あるいは、昔の記憶を懐かしむ様子から、pにしたのかもしれません。
全曲通して聴いてみよう!
最後に、今までの解説を踏まえて「夏の思い出」を鑑賞してみましょう。
今までとは聴き方が変わったのではないでしょうか?
まとめ
今回のまとめは次のとおりです。
・歌詞で描かれている尾瀬が、どのような風景なのか
・尾瀬の景色を、どのように音符で表現しているのか
・書かれている詞と音符から、適切な歌い方を汲み取る
「夏の思い出」は歌いやすく平素な曲であるだけでなく、とても細かな配慮がなされた曲でもあります。
これらの理由から中学校の歌唱教材として選ばれたのだと、nickは曲を分析して改めて思いました。
とてもいい曲ですので、みなさんも改めてこの曲に触れてみてください。
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( `Д´)/ジャマタ
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