どうも、nickです。
大人のための中学音楽鑑賞の回になります。
今回から解説するのは、次の曲になります。
今回からはスメタナ作曲の連作交響詩「我が祖国」から、モルダウを解説していきます。
モルダウも、鑑賞の授業で聴いた方の多い1曲ではないでしょうか?
今回から数回に分けてモルダウを、その作曲背景などを交えながらわかりやすく解説していきます。
スメタナって何者?
ベドルジハ・スメタナ(Bedřich Smetana 1824年 – 1884年)は、チェコ出身の作曲家です。
スメタナは裕福な家庭に生まれ、恵まれた子供生活を送ります。
スメタナは子供の頃から「神童」として知られており、6歳の時にはピアノ公演も経験しております。
学校を卒業後はピアノ学校の先生をしながら作曲に打ち込みました。
またスメタナは、チェコ語のオペラを書くなどチェコの音楽発展に貢献しました。
彼が書いたチェコ語で書かれたオペラでは「売られた花嫁」が特に有名です。
現在のチェコにおいては、スメタナはチェコ音楽の創始者として広く知られており、彼の同世代たちと後継者たちよりも上に位置付けられています。
苦労人スメタナ
子供の頃こそ神童してもてはやされ、現在ではチェコ音楽の父として名を残したスメタナですが、彼の青年期以降の人生は苦労の連続でした。
- プラハの民主化運動に参加したがために、しばらく定職につくのが難しくなった
- 次女が結核のため2歳で死去。翌年には長女も4歳でこの世を去る
- プラハで新しく開場した国民劇場の監督に就任するも、火災によって劇場が焼失してしまう
- 体調不良が原因で聴力を完全に失う
- 晩年には鬱や不眠、幻覚などの症状が現れるようになり精神病院に入院。正気と取り戻すことなく亡くなる
こうした苦難の中から作曲されたのが「我が祖国」になります。
連作交響詩「我が祖国」について
今回解説している「モルダウ」は、スメタナが晩年に作曲した連作交響詩「我が祖国」の中の1曲になります。
スメタナは1856年から1861年まで、故国ボヘミアを離れてスウェーデンでピアニスト兼指揮者として活動していました。
この時期にスメタナは、リストの影響を受けて数曲の交響詩を作曲しました。
その後、スメタナはチェコ国民音楽として記念碑的な作品を交響詩の連作の形で創作しようと考え、「我が祖国」を作曲しました。
各楽曲の初演は1875年から1880年にかけて別々に行われており、全6作通しての初演は1882年に演奏されました。
「交響詩」ってなんだ? 〜代表的な交響詩〜
ここでは「交響詩」とはなんなのかを解説します。
交響詩とは標題音楽の1種で、風景や場面、物語を音楽で表現された楽曲のことを言います。
交響詩は作曲家でもあり、当時最高のピアニストでもあったリストが提唱しました。
交響詩の代表的な楽曲として次の3曲を紹介します。
- 魔法使いの弟子
- アルプス交響曲
- ツァラトゥストラはかく語りき
魔法使いの弟子
この曲はフランスの作曲家ポール・デュカスが作曲しました。
ディズニーの「ファンタジア」で取り上げられて有名ですが、元はドイツの詩人ゲーテが書いた詩が元ネタとなっています。
この楽曲は、詩の内容を音楽で表現した作品になります。
アルプス交響曲
リヒャルト・シュトラウスが作曲した本作は、作曲者がアルプス山脈を登山したときの印象を描いております。
曲の筋書きは夜明けから始まり、山を登り、頂上で日の出を見た後に嵐に見舞われながら下山し、夜が訪れるという流れになっています。
演奏時間が1時間近くありますので、お時間のある時に聴いてみてください。
ツァラトゥストラはかく語りき
同じくリヒャルト・シュトラウスの作品。
冒頭は映画『2001年宇宙の旅』で使われているため、広く知られている曲であると思います。
この曲は哲学者、フリードリヒ・ニーチェの同名の著作「ツァラトゥストラ」からインスピレーションを得て作曲した曲になります。
「我が祖国」が描いているのは?
では、スメタナが作曲した「我が祖国」は何を描いているのでしょう?
「我が祖国」は次6つの楽章から構成されています。
- ヴィシェフラド
- モルダウ(ブルタヴァ)
- シャールカ
- ボヘミアの森と草原から
- ターボル
- ブラニーク
スメタナはこの曲を通してチェコ建国の歴史を表現しています。
各楽章の背景設定
1曲目のヴィシェフラドはチェコ、プラハにある丘の城跡になります。
ヴィシェフラドは、後述するフス戦争の戦場の1つともなりました。
2曲目のモルダウはチェコの首都プラハを通る川で、チェコ国内では最長の長さを誇る川です。
3曲目の曲名のシャールカとは、乙女戦争というチェコの伝説に出てくる女性の名前になります。
4曲目はその名の通りボヘミアの森(ベーマーの森)と草原の様子を描いています。
5曲目のターボルとは南ボヘミア州の古い町でフス戦争において神聖ローマ皇帝に反旗をひるがえした急進派が軍事拠点として建設した町になります。
この楽章ではフス派の讃美歌である『汝ら神の戦士』の旋律が引用されており、6曲目の『ブラニーク』でも引き続き用いられています。
6曲目のブラニークはボヘミアにある山のことになります。
この山にはフス派の戦士や聖ヴァーツラフの率いる戦士が眠るという伝説があり、この戦士たちは国家が危機に直面した時それを助けるために復活するのだそうです。
このように全曲通すと、チェコの建国の歴史をオーケストラを通して鑑賞することができます。
チェコの民主化運動に参加し、国家について深く考え、国を愛していたスメタナの集大成にふさわし作品となっています。
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・スメタナはチェコ出身の作曲家である
・スメタナは民主化運動をきっかけに、チェコの音楽発展に貢献できるよう生きるようになった
・モルダウは連作交響詩「我が祖国」の中の1曲である
・「我が祖国」では故郷チェコの歴史や伝説を曲を通して表現されてい
ここまで説明してきた通り、モルダウ鑑賞のポイントはチェコの成り立ちとそれにまつわる伝説が頭にあるかどうかがカギとなります。
次回はモルダウの楽曲について、詳しく解説をいたします。
コメント