どうも、nickです。
大人のための中学音楽、「モルダウ」の2回目になります。
今回は次のことについて解説していきます。
・「モルダウ」がなぜ鑑賞の教材として使われるのか?
・「モルダウ」を場面ごとに分けて解説。
なお、前回をご覧になられていない方は、↓からご覧になってください。
なぜモルダウを鑑賞するのか?
なぜモルダウが鑑賞の授業で取り上げられることが多いのでしょうか?
nickが考える理由は2つあります。
- 場面がハッキリとしている
- 曲の作りがシンプルである
順を追って解説していきます。
場面がハッキリとしている
1つ目の理由は、楽曲内での場面設定がハッキリしているためです。
モルダウに関しては、スメタナ自らが次のように解説をしています。
この曲は、ヴルタヴァ(モルダウ)川の流れを描写している。
ヴルタヴァ川は2つの源流から流れだし(1)、それらが合流し一つの流れとなる(2)。
そして森林や牧草地を経て(3)、農夫たちの結婚式(4)のそばを流れる。
夜となり、月光の下、水の妖精たちが舞う(5)。
岩に潰され廃墟となった気高き城と宮殿のそばを流れ、ヴルタヴァ川は聖ヨハネの急流で渦を巻く(6)。
そこを抜けると、川幅が広がりながらヴィシェフラドのそばを流れてプラハへと流れる。そして長い流れを経て、最後はラベ川へと消えていく(7)。
モルダウの場面展開は( )で書いた通り、大きく7つの場面に分かれています。
この各場面の説明書きは、楽譜にも書かれています。
どのような展開になっているのかは後ほど説明しますが、モルダウは実在の川をとその周辺の様子を描いた曲となっており、イメージと曲の展開が結びつけやすいため、中学校の鑑賞でよく使われているのだとnickは思います。
なお、ここまで細かく場面設定が楽譜に書かれているのは、「我が祖国」の6曲中なぜかモルダウのみなっています。
曲の作りがシンプルである
モルダウは比較的最近の曲でありますが、メロディーや曲の展開、使われている和音がハッキリとしており、オーケストラ作品の中ではかなり聴きやすい部類の楽曲となっています。
これは、当時のチェコでは交響詩はなじみの薄いジャンルであったため、聴衆に聞きやすくするためにスメタナが配慮して作曲したためであります。
また、交響詩という「音楽で音楽以外のものを表現する」というところも、音楽とイメージが結びつきやすくしている要因となっています。
長い人生の中で、多種多様な音楽にたくさん触れていくための練習にはうってつけの曲だとnickが思います。
各場面の解説
ここからは、動画と楽譜の画像を使いながらモルダウで描かれている各場面について解説していきます。
こちらの動画を抜粋しながら解説していきます。
前奏(1)
前奏では、ほぼ全ての場面で使われている「川の流れ」のテーマが提示されます。
この、16分音符の流れるメロディーがいたるところで出てきますので、押さえておいてください。
メインテーマ(2)
ここでは皆さんがよく知っているであろう「モルダウ」のメインテーマが演奏されます。
楽譜を見ると、川の流れのテーマが伴奏として使われているのがわかります。
森と狩りの場面(3)
この場面は、モルダウ川のほとりの森で狩りを行っている人たちの様子が描かれています。
余談ですが、ホルンという楽器はもともと狩猟の合図として使われていた楽器です。
ヨーロッパではホルンというと、森や狩りの様子を連想させるそうです。
村の婚礼(4)
ここでは田舎の村の結婚式の場面が描かれています。
ここでは結婚を祝って村の人たちが踊りを踊っている風景が描かれています。
おそらくチェコのポルカではないかと思われます。
このような民族音楽の要素を取り入れるあたりに、スメタナの祖国に対する想いが垣間見えます。
水の妖精の踊り(5)
ここでは水の妖精が現れます。
妖精に分かれを告げた後、川は廃墟となった城と宮殿のそばを流れていきます。
そして、動画の2:16あたりではメインテーマ(2)が再度演奏されます。
森や村、廃墟を通り抜けて元の川の流れに戻ってきたことが感じ取れます。
聖ヨハネの急流(6)
ここから川は聖ヨハネの急流にたどり着きます。
聖ヨハネとは、14世紀のボヘミアに実在したキリスト教の司祭で、ローマカトリック教会の聖人に奉られている、「ネポムクの聖ヨハネ」のことになります。
聖ヨハネは優れた司祭でしたが、時のボヘミア国王に捕らえられ、拷問の末に亡くなってしまいました。
聖ヨハネの遺体はプラハのカレル橋に投げ捨てられ、その1ヶ月後にモルダウ川から引き上げられました。
引き上げられた遺体は300年以上後になっても舌が腐敗しておらず、これが奇跡であるとして列聖されました。
そのことから、聖ヨハネは主にチェコ・オーストリア・ポーランドで強く信仰される聖人だそうです。
モルダウで描かれたのは、聖ヨハネが、プラハのカレル橋から投げられ、遺体がヴルタヴァ川から引き上げられたという史実がを元にしていると思われます。
なお聖ヨハネの急流は、後にダム建設に伴う人造湖に沈んでしまったため、現在では実在しないそうです。
エンディング(7)
最後のメインテーマ(2)が演奏されますが、今まで短調で演奏されていたメインテーマが長調に変わっています。
短調から長調に転調することで、エンディングに向けてエネルギーが増していく効果がより生まれています。
通して聴いてみよう!
今までの解説を踏まえた上で、モルダウを最初から最後まで聴いてみましょう。
各場面の移り変わりや川の流れのテーマがほぼ全ての場面で演奏されていることがわかったでしょうか?
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今回のまとめは次のようになります。
・モルダウは、実在の川のベースにわかりやすいメロディーなどを使って書かれているため、鑑賞教材にとても向いた作品である
・モルダウは大きく7つの場面に分かれている
・曲のほとんどの場面を通して、前奏の川の流れのテーマが使われている
・チェコの民族舞踊や信仰の厚い聖人などをモチーフとした場面は、チェコ民族への強い意識が感じられる
今回解説した通り、モルダウは作曲の背景や題材、楽曲構成のシンプルさからオーケストラ鑑賞の教材としてとても適した楽曲であります。
「授業の時にはよくわからなかった」という方も、今回の解説を通して改めてクラシック音楽に触れてみてはいかがでしょうか?
次回はモルダウ以外の楽章について解説していきます。
※他の音楽鑑賞の解説はこちらからどうぞ
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