【大人のための音楽鑑賞】違いは編曲方法?比較でわかる2つの「野ばら」の違いについて徹底解説!【後編】

シューベルト
nick hosa
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どうも、nickです。

シューベルトとヴェルナーの「野ばら」解説、後編になります。

後編では2曲を比較して曲想や作曲方法の違いについてわかりやすく解説します。

前編を見ていない方は、下のリンクからご覧になってください。

 

作曲の背景

シューベルトとヴェルナーは、音楽史上はロマン派の世代にあたります。

ロマン派は19世紀初頭から19世紀末にかけての音楽史上の重要な時期であり、音楽の表現やスタイルに大きな変革をもたらした時期になります。

ロマン派の音楽は、感情の表現や個人の内面世界への探求、豊かな表現力、叙情性、幻想的な要素などが特徴とされています。

ロマン派の音楽の特徴や主要な要素は次の通りです。

  • 個人的な表現と感情の豊かさ
  • 音楽の物語性
  • 自然や神秘主義への傾倒
  • 大規模化した編成
  • 国民性や民族主義の表現

この頃は文学とのコラボが多く、当時人気の小説の多くがオペラ化されました。

ヴェルディ作曲の「椿姫」も小説が原作のオペラになります。

また詩人が書いた詩にに曲をつけるということも、ロマン派の時代から多く行われるようになりました。

特にシューベルトは詩人のゲーテが書いた詩に曲をつけることを多く行なっておりました。

詩の内容

ゲーテが作詞した「野ばら」の内容は次の通りです。

【原詩】

Sah ein Knab’ ein Röslein stehn,

Röslein auf der Heiden,

war so jung und morgenschön,

lief er schnell, es nah zu sehn,

sah’s mit vielen Freuden.

Röslein, Röslein, Röslein rot,

Röslein auf der Heiden.

【日本語訳】

少年が見つけた小さな野ばら

とても若々しく美しい

すぐに駆け寄り間近で見れば

喜びに満ち溢れる

バラよ 赤いバラよ 野中のバラ

2つの野ばらの違いについて


「野ばら」を作詞した頃のゲーテは、父親の薦める大学に通うためにフランス国境付近のシュトラスブルクという街へ移り住んでいました。

ゲーテは、友人と共にシュトラスブルクから30キロほど離れたゼーゼンハイムという村を訪れた際、そこの牧師の娘と恋に落ちました。

しかしゲーテは、ゲーテとの結婚を望む彼女との恋愛を断ち切ってしまいました。

「野ばら」の歌詞には二人の別れの様子が暗に込められているのではないかと言われておりますが、真相の程は定かではありません。

楽譜から見る違い

ここでは楽譜の見た目の違いから、2つの曲を比較してみようと思います。

拍子

シューベルトの「野ばら」は4分の2拍子となっております。

こちらの拍子は軽快で前へ前へと進んでいく印象を与えます。

対してヴェルナーの「野ばら」は8分の6拍子となっております。

シューベルトの「野ばら」に対して、こちらの拍子はゆったりと流れる印象を与えます。

nick hosa
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拍子が違うだけでこれだけ曲の印象が変わるのですね。

調性

シューベルトの「野ばら」はト長調となっております。

ト長調の採用していることにより、シューベルトの「野ばら」は明るくハッキリとした曲調となっております。

対してヴェルナーの「野ばら」は変ホ長調となっております。

変ホ長調を採用することでやわからく幻想的な曲調にとなっております。

nick hosa
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選択する調によって、曲の雰囲気はガラッと変わるのです。

それぞれの「野ばら」の特徴

ここからはそれぞれの「野ばら」の特徴を解説していきます。

シューベルトの「野ばら」

独唱

シューベルトの「野ばら」はピアノと独唱による楽曲であり、ピアノの奏伴が非常に重要な役割を担っています。

ピアノの旋律や和音は曲の雰囲気を生み出し、歌声の魅力をより一層引き立てます。

ピアノ伴奏の性質

シューベルトの「野ばら」のピアノ伴奏は、他のシューベルトの歌曲作品に共通する特徴の一つであり非常に重要な役割を担っています。

伴奏は、歌詞の内容や感情に合わせて変化し曲の雰囲気をたくみに生み出しています。

繰り返しの使用

シューベルトの「野ばら」は、曲中に同じ旋律や和音を繰り返し使用することで曲の構造や印象を強調しています。

これはシューベルトの作曲スタイルの一つであり、シューベルトの作品の中でも頻繁に見られます。

シューベルトの歌曲「糸をつむぐグレートヒェン」。旋律の繰り返しが多用されている。

ヴェルナーの「野ばら」

無伴奏の合唱曲

ヴェルナーの「野ばらは」シューベルトのものと違い、無伴奏の合唱曲の形態をとっております。

ピアノ伴奏と独唱の形態をとっているシューベルトの「野ばら」に対して、重厚さと奥行き感を感じることができます。

ハーモニーの変化

ヴェルナー「野ばら」のハーモニーは曲の進行に合わせて変化し、曲の様々な感情表現を引き出しています。

無伴奏の合唱曲の形態を採用していることもあり、和音の変化がより伝わりやすくなっております。

短い曲の持つ魅力

「野ばら」は、比較的短い曲であるため、耳に残りやすく覚えやすい曲となっております。

そのこともあり、合唱団や指揮者にとっても比較的演奏しやすい曲のひとつとなっております。

比較して聴いてみよう

以上のことを踏まえた上で、シューベルトとヴェルナーの「野ばら」を聴き比べてみましょう。

まとめ

今回は楽譜や編曲上の特徴から2つの「野ばら」を比較、解説していきました。

同じ題材でも採用する形態や拍子、調によって出来上がる曲が全く違ったものになるのがとても興味深いです。

このように音楽を鑑賞すると、より興味を持って音楽を聴くことができるのではないでしょうか?


nick hosa
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いかがだったでしょうか?

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( `Д´)/ジャマタ

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