どうも、nickです。
R.シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の解説の2回目です。
今回は楽曲の解説をわかりやすく行いたいと思います。
前回をご覧になられていない方は、そちらからご覧になって下さい。
わかりやすい楽曲解説
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は1894年から1895年にかけて作曲されました。
この作品は14世紀の北ドイツの伝説の奇人、ティル・オイレンシュピーゲルの物語を、シュトラウスの巧みな作曲技術によってオーケストラ化した曲となっています。
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は1895年11月5日に、ドイツのケルンにてフランツ・ヴュルナーの指揮で初めて演奏されました。
ちなみに、指揮者のヴェルナーはソルフェージュの練習曲集、「コールユーブンゲン」の作者でもあります。
交響詩とは?
交響詩とは、実在する風景や物語をオーケストラで表現した作品のことを指します。
今回紹介する曲も、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」というドイツの民話をオーケストラで表現した楽曲になります。
交響詩の細かい説明は、スメタナの「モルダウ」の記事を参考にしてください。
元ネタはドイツの民話
ティル・オイレンシュピーゲル(Till Eulenspiegel)は14世紀の北ドイツに実在したとされる、伝説上の人物のことです。
彼は様々ないたずらで人々を翻弄し、最期はペストによる病死、もしくは処刑されたと言われています。
ティルの物語のあらすじは、次の通りになります。
「昔々あるところに、ティル・オイレンシュピーゲルという、いたずら者がおりました。
あるとき市場を馬で走り回り、大騒ぎになったところで全速力で逃走。 その後、僧に変装し、みんなに道徳について説教します。しかし生来のいたずら者はこの変装に耐え切れなくなります。
次に騎士となったティルは美しい娘に出会い恋をします。しかしその彼女から相手にされないばかりか肘鉄砲を食らって失恋。絶望のあまり、人類への復讐を誓います。
まず復讐は俗物学者に向け、大論争を始めます。しかし面倒になり、退散。朗らかに流行歌を口ずさみ始めます。
しかしついに悪行のため捕らえられ、裁判にかけられます。あざ笑うように口笛を吹きつつも死の恐怖に襲われながら死刑台にのぼり、とうとう生命を絶たれます。
このようにいたずら者の生涯は終わったが、いつまでも人々の心に生き残っています。
物語の中で繰り広げられる彼のいたずら話やとんち話は、日本でいうところの「一休さん」のようなものだそうです。
そのため、彼の物語はドイツでは非常に有名なのだそうです。
名前の由来についてですが、ドイツ語でオイレンはフクロウ、シュピーゲルは鏡という意味になります。
これは、ティルが人間のエゴや醜さを映す鏡の象徴として描かれているため、このような名前になったと言われております。
リヒャルト・シュトラウスが書いたこの楽曲も、物語にそって作曲されています。
曲を細かく解説
ここからは、実際の曲を物語にそって解説します。
「ティル」鑑賞のポイントは次の2つになります。
- 何度も出てくる2つのティルの旋律
- 物語に合わせた楽曲構成と表現
何度も出てくる2つのティルの旋律
この曲には「ロンド形式による昔の無頼の物語」という副題がつけられています。
ロンド形式というのは異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題とも言います)を何度も繰り返す形式の曲を指します。
この曲では次の2つの旋律が何度も出てきます。
ティルの旋律①
ティルの旋律②
この2つの旋律は、ことあるごとに演奏されています。
2つのティルの旋律を、耳で追いかけながら鑑賞することができるかどうかが1つのポイントとなります。
物語に合わせた楽曲構成と表現
楽曲は大まかに次の場面に分かれています。
・序奏 ・4つのエピソード 1.馬に乗って街を走り回る 2.僧侶に化け、でたらめな説教をする 3.騎士に変装して女性を口説く 4.学者と論争 ・ティルの逮捕と処刑 ・エピローグ
この構成は、先ほど紹介したティルの物語の筋書きに合わせた構成となっています。
ここからは、物語の流れに合わせて曲を細かくみていきます。
序奏〈昔々あるところに〜〉
序奏のテーマは「昔むかしあるところに〜」と、物語の冒頭を語る場面を表しています。
続いて、ホルン・ソロによる有名な主題(旋律①)、そしてE♭クラリネット・ソロによるティルの旋律②の2つの印象的な旋律が、この冒頭で演奏されます。
ここから、この2つの旋律が形を変えながら演奏されていきます。
4つのエピソード ①馬に乗って街を走り回る
ここからは、物語に登場する4つのエピソードが描かれます。
1つ目のエピソードでは馬に乗って町中を走り回るティルと、それにより町中が大混乱する様子が描かれています。
ここではラチェットという変わった楽器が使われています。
走り回る様子や、街の人々の騒がしい様子を表現するのに使ったのだと思われます。
そしてティルは空を飛ぶ長靴をはいてその場から逃げ、ネズミの巣穴に隠れてしまいます。(0:30〜)
4つのエピソード ②僧侶に化け、でたらめな説教をする
2つ目のエピソードではティルが僧侶に変装し、でたらめな説教を垂れる姿が描かれています。
ですが、次第に雲行きが怪しくなっていきます。(0:50〜 ティルの旋律②の変形がだんだんしおらしくなっていく)
4つのエピソード ③騎士に変装して女性を口説く
3つ目のエピソードでは、ティルは騎士に変装して美しい女性を口説きにいきます。
ですが全く相手にされないだけでなく、ティルは女性から肘鉄(1:04辺りのティンパニーの1撃で表現)を食らってしまいます。
あっさりフラれてしまったティルは、全人類に対して復讐を誓います。(1:23〜 金管楽器による激しいティルの旋律②の変形)
4つのエピソード ④学者に論争をふっかける
4つ目のエピソード
復讐の標的を学者たち定めたティルは、彼らに論争をふっかけます。
しかし次第に旗色が悪くなり、鼻歌まじりにティルは逃げ出していきます。(1:37〜)
その後、ホルンによるティルの旋律①が再度演奏され、序奏の中間部分へと帰ってきます。(2:53〜)
ティルの逮捕と処刑
依然としてティルのいたずらが続くかのように、高らかに音楽が展開していきます。
そして、演奏が最も盛り上がったタイミングで激しいドラム・ロールによって音楽が中断されます。(1:29〜)
そして、ティルの逮捕と処刑のシーンが描写されていきます。
最初は余裕を見せているティルですが、次第に死の恐怖に怯えていきます。(ティルの旋律②が甲高くなってく)
そして死刑の判決がおり、ティルは処刑されてしまします。(1:09〜)
エピローグ
エピローグは冒頭部分の再現となっています。
これは、ティルの物語がこれからも受け継がれていくであろうことを予感させる意図があると思われます。
このエピローグがあることで、楽曲全体も締まった印象になります。
全曲通して聴いてみよう!
それでは最後に、曲を最初から通して聴いてみましょう!
ティルの仕掛けたいたずらが、楽曲を通して浮かび上がってきたでしょうか?
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・本作品は伝説上の人物の物語をオーケストラで表現した作品である
・作曲にはロンド形式が採用されており、2つの旋律が繰り返し演奏されることで展開されている
・曲ではティルの様々ないたずらから女性の肘鉄まで、物語の細部に渡って音楽で表現されている。
・曲の最後で冒頭部が再現されることで、ティルの物語は受け継がれていくことを暗示している
今回紹介した「ティル」は、R.シュトラウスの巧みな作曲技術により複雑ながらもとてもわかりやすい曲となっております。
「ティル」は、音楽の授業でも使っていける楽曲であるとnickは考えております。
鑑賞するだけでなく、オーケストラ作品の鑑賞教材としても使っていただけたら幸いです。
いかがだったでしょうか?
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( `Д´)/ジャマタ
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