【大人のための中学音楽】オペラ鑑賞のコツは3つの場面?元音楽教員がヴェルディのアイーダをわかりやすく解説!

ヴェルディ
nick hosa
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どうも、nickです。

大人のための中学音楽「アイーダ」の第2回です。

今回は次の3つについて解説をしていきます。

・作品の概要

・「アイーダ」鑑賞のポイント

・オペラを見るためのコツ

前回の記事をご覧になっていない方は、↓からご覧ください。

作品の解説

アイーダは、1870年にエジプトのカイロ市から「エジプトを舞台にしたオペラを書いて欲しい」との依頼よって作曲されました。

ヴェルディはこの曲を、着手からわずか5ヶ月で書き上げました。

アイーダのような大規模オペラの作曲としては異例のハイペースでありました。

カイロでの初演は当初1871年1月に予定されていましたが、普仏戦争によって延期を余儀なくされました。

結局、同年の12月に初演が行われることになりましたが、初演は大成功となりました。

注文の多い作曲家ヴェルディ

ヴェルディはこのオペラを作曲するにあたって次のような条件をカイロ市側に提示しました。

  • ヴェルディは作曲料として15万フランス・フラン(当時のフランスの通貨、日本円にして約300万円)を受領する。
  • 台本はヴェルディが選んだ作家に作成させる。
  • 台本はイタリア語にすること。
  • 初演はヴェルディが選んだ指揮者によって行う。
  • ヴェルディは初演の監督をしない。
  • 初演が6ヶ月以上遅れた場合、ヴェルディがカイロ以外で初演ができるようにする。
  • 初演以外のすべての上演に関する権利はヴェルディが保持する。

当作はカイロから委嘱されたものであったが、異国情緒も盛り込んだ雄大な作品に仕立てられそうだとヴェルディは予感しました。

ヴェルディ自身が多忙だったこともありましたが、

そのため、カイロでの演奏以降も世界中で「アイーダ」が演奏可能にするために、これだけの要求をしたのだと考えられます。

これだけの要求をヴェルディはしたにも関わらず、カイロ市側はこれらをすべて受諾しました。

ヴェルディが当時どれほどの実力ある作曲家であったかが伺えます。

オペラの登場人物とあらすじ

ここからは作品をより詳しく解説していきます。

登場人物相関図

主な登場人物は次のようになっています。

世界文化社:「あらすじで読む名作オペラ50」より引用

ラダメスはエジプトの将軍。アイーダとは恋仲なのだが、凱旋後にエジプト王に無理矢理アムネリスと婚姻を結ばされる。

アイーダはエジプトと敵対するエチオピアの王妃。今は奴隷ということで素性を隠している。

アムネリスはエジプトの王女。ラダメスに一方的な好意を寄せており、アイーダをあの手この手で貶めようとしている。

アモナスロは敗れたエチオピアの王。アイーダの父。素性を隠してエジプト国王に慈悲を乞うが、内心は復讐に燃えている。

エジプト国王。アムネリスの父。エチオピアを制圧した褒美に、ラダメスに娘のアムネリスとの婚姻と次期国王の座を与える。

あらすじ

中学校の授業でよく見る場面である第2幕、第2場のあらすじは、次のようになります。

ラダメスは軍勢を率いて凱旋する。彼はエチオピア人捕虜の釈放をエジプト国王に願う。捕虜の中には身分を隠したアモナスロもいたので、アイーダはつい駆け寄ってしまうが、アモナスロは「エチオピア国王は戦死し、いまや我々は無力」と偽りを述べ、彼の身分は発覚せずにすむ。祭司長はアモナスロを人質として残すことを条件に捕虜釈放に同意、エジプト国王はラダメスに娘アムネリスを与え、ラダメスを次の国王にも指名する。勝ち誇るアムネリス、絶望に沈むアイーダ、復讐戦を画策するアモナスロなどの歌が、エジプトの栄光を讃える大合唱と共に展開する。

鑑賞のポイント

第2幕、第2場は、大まかに3つの場面に分かれております。

  1. 凱旋行進の場面(合唱とオーケストラ)
  2. バレエの場面(オーケストラと踊り)
  3. 登場人物の会話の場面(独唱と合唱)

添付している動画は、該当の場面のみ再生されるようにしていますので、気軽に再生してみてください。

凱旋行進の場面(合唱とオーケストラ)

エジプト軍がエチオピアを制圧して凱旋してくることを、国民が讃えている場面。

本動画には映っていないのですが、アイーダトランペットによるファンファーレが特に有名ですね。

「アイーダ」の公演のためだけに開発されたトランペット。公演の際に出版社から貸し出しされるそうです。

この場面はオーケストラの演奏と合唱で舞台が構成されています。

バレエの場面(オーケストラと踊り)

オペラではこの場面のように、バレエが挿入される演目もあります。

場面の様子や服装から、奴隷の踊りであると推測できます。

歌以外で見せ場を作るところも、エンターテイメントとしてオペラが確立できた要因でしょう。

場面の後半は凱旋行進の続きとなっています。

登場人物の会話の場面(独唱と合唱)

ここでは登場人物たちが、歌でセリフのやりとりが続いていきます。

褒美として冠を授かるラダメス。
褒美の代わりに捕虜を解放してほしいと要求するラダメス。
しかし、司祭長は国王に「蛮族は皆殺しにすべき」と忠告をする。
アイーダも間に入り恩赦をせがむ。

オペラの面白いところとして、演者が歌いながらも演技をしているところにあります。

エジプト国王がアムネリスとの結婚を許した際のアイーダの演技。
アムネリスと結婚せよと言われて時のラダメスの微妙そうな表情。
ラダメスとの結婚が決まった時のアムネリス。
渾身のドヤ顔。

場面の最終盤ではそれぞれの登場人物が本音を漏らしています。

合唱と同時進行で歌われるこの場面からは非常に高度な作曲技術を感じます。

破綻なく楽譜に書けるヴェルディの職人技が光ります。

民衆が喜びの歓声を上げる中、本音を漏らすラダメス。
喜びを隠しきれないアムネリス。
エチオピアの王もちゃっかり本音を漏らす。
エジプト国王にラダメスとアムネリスの婚姻を宣言されてしまい、悲嘆にくれるアイーダ。

オペラ鑑賞のコツ

では、オペラを鑑賞する上でのコツは何なのでしょうか?

アイーダの第2幕、第2場のように、オペラとは次のように構成されています。

  1. 登場人物による独唱は重唱
  2. オーケストラのみの演奏の場面(+バレエがつく場合もあり)
  3. 合唱の場面

1の登場人物による独唱、重唱は主に人物の気持ちを語る場面となっています。

各ソリストの見せ場ともなっていますので、歌に気合が入っていたり、歌そのものが技巧的であったりします。

2は主にオペラの始まりや演目の間に挿入されることが多いです。

ちょっとした幕間休憩だと思ってください。

単に演奏だけ聞いてもらう場合や、バレエや身振り手振りのみの演技(パントマイム)が合わさる場合もあります。

3は特に盛り上がる場面で合唱が用いられることが多いです。

ソリストも合唱に加わることもあり、その迫力は見事なものです。

 

このようにオペラは大まかに3つの場面に分けることができ、それぞれに役割があります。

この3つの役割がわかっていると、物語の理解もしやすくなります。

ぜひ覚えておいてください。

「アイーダ」この後はどうなる?

「アイーダ」の話はこの後どうなってしまうのでしょうか?

簡単に箇条書きで説明していきます。

・ラダメスがアイーダにエジプト軍の機密をもらす。

アモナスロはアイーダをスパイにしようとけしかける。

・ラダメスは捕らえられ、裁判にかけられる。

・裁判の直前にアムネリスはラダメスと面会。アイーダを諦めてくれたら裁判を取り計らってあげると申し出るも、ラダメスはそれを拒否する。

結構大胆な発言をしているラダメス。

・ラダメスは裁判の結果、生き埋めの刑となる。

・ラダメスが地下牢に入れられると、そこにはアイーダが待っている。

・2人は現世の苦しみに別れを告げ、平穏に死んで行く。

現世で結ばれぬのなら、せめてあの世で・・・の発想ですね。

最後はラダメス、アイーダが生き埋めとなり、アムネリスは後悔の念にさいなまれる。

ハッピーエンドともバッドエンドとも取れる結末ですね。

それがアイーダが長く公演されている理由なのかもしれません。

まとめ

今回のまとめは次のようになります。

 

・アイーダはカイロ市の委嘱によって作成された

・ヴェルディはカイロ側に多数の条件をつけたが、カイロ側は全ての要求を飲んで作曲をしてもらった

・オペラは大まかに3つの場面に分かれており、アイーダの有名な場面もそれに則って書かれている。

 

アイーダの有名な場面は、オペラの構成を全て押さえているため、鑑賞教材としては十分であるとnickは考えております。

今回の記事や学校の授業を通して、オペラが鑑賞できるようになっていただけたらと思います。

全編ご覧になりたい方は↓の動画をご覧ください。


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( `Д´)/ジャマタ

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