どうも、nickです。滝廉太郎の「花」の解説、第2回目となります。
今回は「花」のより詳しい解説をわかりやすく行っていきます。
前回の記事をご覧になっていないかたは、こちらからどうぞ。
楽曲について
「花」もともとは1900年(明治33年)に発表された瀧廉太郎の歌曲集『四季』の第1曲でありました。
これはちょうど廉太郎がドイツへ渡る直前の作品となっています。
歌曲集『四季』の他の曲は、第2曲が「納涼」、第3曲が「月」、第4曲が「雪」と題されており、日本の四季を巡り歌った曲となっています。
ですが、第1曲「花」のみが有名となってしまい、他の3曲はほとんど知られておらず、歌われることも稀であります。
その点はヴィヴァルディの「春」と似ていますね。
参考までに、組曲を全曲通して歌われた貴重な映像を添付しておきます。
作詞について
作詞を担当した武島羽衣(たけしま はごろも、1872年- 1967年)は、日本の国文学者です。
明治43年から昭和36年(1961年)の退職まで50年以上にわたり日本女子大学で教授として教鞭を執り、特に女子教育に尽力した人物でありました。
わかりやすい楽曲解説
ここからは楽曲の詳しい解説を、楽譜などの図を用いて解説していきます。
曲全体の特徴
曲全体の特徴は大きく2つあります。
- 男女どちらが歌っても歌いやすい音域
- メロディーが単純な繰り返しになっていない
歌いやすい音域
「花」はピアノ伴奏付きの女声二部合唱、もしくは女声二重唱また、混声二部合唱、混声二重唱などで歌われます。
ですが、男性が歌っても音域が高すぎないため中学生が歌うのに適しています。
また、高くて音が出ない生徒にはハモリのパートを歌ってもらえば良いので、声変わりへの配慮もできます。
男女どちらが歌っても、音域が高くなりすぎないところが歌唱教材として選ばれている理由の一つであるとnickは考えます。
メロディーが単純な繰り返しになっていない
「花」は3番まで歌詞がある有節歌曲形式に基づいています。
ですが、単純な繰返しではなくところどころで旋律を変えております。
この変化を感じ取れるかどうかが、鑑賞する上での1つの課題となっています。
そして、「なぜ変えたのだろうか?」と考えることが、この曲を鑑賞するポイントでもあるとnickは思います。
具体的な話は、この後していきます。
楽譜の解釈と歌う上での工夫
ここからは「花」を歌っていく上での解釈を、1番から順に解説していきます。
1番について
1番で押さえるべき点は、「休符」と「歌い出し2小節目」になります。
休符について
まず注意したい点の1つは、歌い始めの「はーるの」の後にある16分休符のあつかいい方になります。
ここの休符で、間をきちんと作ることが大切です。
この間をきちんと作ることによって、言葉に締まりが生まれます。
この休符があるのとないのとでは、歌の印象がガラリと変わってしまいます。
この休符はなんとなく書かれた休符ではなく、意図的に書かれた休符であるとnickは分析します。
歌い出し2小節目
ここでは主和音の第一転回系と呼ばれる和音が使われています。
細かい説明は省きますが、この和音は弱い安定感を生み出す効果があります。
なので、あまり声を収めすぎないほうが良いと思います。
2番について
2番を分析するポイントは、1番との違いを理解することになります。
1番と2番の歌い出しの違い
1番の歌い出しがf(フォルテ)であるの対して、 2番ではp(ピアノ)となっています。
なぜ廉太郎は1番と2番で歌い出しの強弱記号を変えたのでしょうか?
1番の歌い出しの歌詞は「はるのうららの」となっています。
春と訪れは嬉しいことなのでしょうか?
それとも、悲しいことなのでしょうか?
春の訪れは嬉しいことなので、1番の歌い出しはfにしたのではないかとnickは推測します。
それに対して2番の歌い出しの歌詞は「みずやあけぼの」となっています。
あけぼのとは日の出、つまりは明け方の時間を指しています。
春の明け方の日光というのは柔らかい日差しなのではないでしょうか?
この柔らかい日差しを表すために、2番の歌い出しはpにしたのではないかとnickは推測します。
両者の言葉がイメージさせる情景を、言葉だけでなく声の「質」を変えることでより深い表現ができるのではないでしょうか?
2番のつゆあびての旋律の違い
1番の「すみだがわ」のところは音符が上昇していくのに対して、2番の「つゆあびて」は旋律が下降しています。
廉太郎はなぜ2番の同じ場所の旋律を変えたのでしょうか?
単純な繰り返しを避けるためでしょうか?
それとも、気持ちの気まぐれなのでしょうか?
この理由を解く1つの考えとして、先ほど解説した1番と2番の歌い出しの違いから推理できるとnickは考えています。
1番の歌い出しは春の喜びを歌っていました。
なので、この旋律は上昇していくのではないかと思います。
逆に2番の歌い出しは、明け方の柔らかい日差しを歌っていました。
なので、2番の旋律は上昇させるのではなく下降させることで、より「あけぼの」の柔らかさを表現しようとしたのではないかと考えます。
これはあくまで1つの案になります。
みなさんも独自に考えてみてください。
それが音楽鑑賞の醍醐味だと思います。
3番について
3番のポイントは3番にしかない「しかけ」を理解する点になります。
おぼろづきの「しかけ」
1番、2番の同じ場所には強弱記号が書かれていません。
ですが、3番の「おぼろづき」のところにのみp(ピアノ)が書いています。
これはなぜなのでしょうか?
そもそも、朧月とはどんな月なのでしょうか?
朧月とは雲でぼやけて見える月の様子をさします。
それを表現するために、廉太郎はpで歌うよう楽譜に書いたのではないかと推測します。
クレッシェンドの「しかけ」
曲の最後に向かう手前にはクレッシェンド(だんだん強く)が書かれています。
なぜここでクレッシェンドが書かれているのでしょうか?
それにはこの場面のコード進行が関わっています。
この場面のコード進行は、このように矢継ぎ早に変わっていきます。
この様にコード進行が目まぐるしく変わるのは、「花」ではこの場面のみとなっています。
またコード進行も、先に進むにつれてふくれ上がっていくようなコード進行となっています。
なので、この場面は自然とクレッシェンドがかかる仕掛けとなっています。
このコード進行による曲の盛り上がりを、ピアノ伴奏から感じ取りながら歌えるかどうかが大切になります。
リタルダンドの「しかけ」
3番のラストにはrit.(リタルダンド)の記号が書かれています。
リタルダンドの意味は、「だんだん遅く」になります。
リタルダンドの効果は様々あります。
- rit.以降のフレーズを印象付けるため
- rit.以降に向けてエネルギーを高めていきたいため
- 名残惜しさや、ためらいを表現するため
これらの効果を狙って、廉太郎は曲のエンディングの手前にrit.を書いたのだと思います。
最後2小節の「しかけ」
また、歌の最後の2小節では主和音の第2展開系からの属和音への和声進行が見られます。
この進行は、最終的に主和音に解決する強い動きを生み出します。
この進行は、「花」ではここでしか使っていない和声進行になっています。
これらのことから、ここの歌い方は最後に向かって声が抜けていかないようにするのがよいとnickは分析します。
最後に、1番から通して聴いてみよう!
今までの話を踏まえた上で、「花」を1番から3番まで通して聴いてみましょう!
今まで聴いていた「花」とは、だいぶ印象が変わったのではないでしょうか?
まとめ
今回のまとめは次のとおりです。
・「花」はもともと組曲の中の1曲だった
・「花」は男性女性どちらでも歌いやすい曲のため、教材として選ばれている
・1番から3番までの違いを楽譜から読み取り、歌で表現することが大切である
今回は「花」の詳しい解説を、なぜ中学校の教材に選ばれているのか?を交えながら行いました。
第1回からの解説を読んで「そうだったのか!」と思っていただけましたら、幸いです。
今後も、みなさんにわかりやすい解説を心がけていこうと思います。
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( `Д´)/ジャマタ
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