どうも、nickです。
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」鑑賞の第2回です。
今回は「動物の謝肉祭」の鑑賞のポイントを、わかりやすく解説していきます。
前回の記事を見ていない方は、↓からご覧になってください。
動物の謝肉祭鑑賞のポイント
「動物の謝肉祭」鑑賞のポイントは、大きく2つになります。
- 変則的な楽器編成
- 他の作曲家のパロディー
順に解説します。
変則的な楽器編成
動物の謝肉祭の演奏に使われる楽器は、次の通りになります。
- フルート(終曲でピッコロに持ち替え)
- クラリネット
- グラスハーモニカ(グロッケン)
- シロフォン
- ピアノ2台
- ヴァイオリン×2
- ヴィオラ
- チェロ
- コントラバス
このように、金管楽器が一切編成に含まれない、変則的なアンサンブルの編成となっています。
これは、演奏された場所の制約でこの編成になったと思われます。(後述)
(補足)サロンとは?
サロンとはフランス語で宮廷や貴族の邸宅を舞台にした社交界ことを指します。
17世紀の初め頃よりヨーロッパの貴族や文化人たちの間で流行しました。
主に文化人、学者、作家らを招いて知的な会話を楽しんでいたそうです。
今回鑑賞する動物の謝肉祭も、おそらく誰かの個人宅内での演奏を想定した作品であるため、先ほどのような変則的な編成となったと思われます。
他の作曲家の曲のパロディー
もう一つの特徴は、他の作曲家が作曲した旋律をそのまま引用している点です。
具体的に次のようなパロディーが含まれています。
- 他人の作曲したメロディーをわざとゆっくり演奏。
- わざと下手くそに演奏する。
- フランス民謡の旋律の引用。
現在ほどパロディーに寛容ではなく、著作権という考えもはっきりしていなかった時代だったためでしょうか、サン=サーンスは亡くなるまで動物の謝肉祭の楽譜の出版を禁じていたそうです。
さすがのサン=サーンスも、パロディーだらけの曲を世に出すことはマズいと思ったのでしょうか・・・?
パロディー部分については、各曲の解説の時に説明します。
個性豊かな14曲の動物たちを解説
ここからは動物の謝肉祭で演奏される14曲について、わかりやすく解説していきます。
序奏とライオンの行進曲
短い序奏の後に、堂々としたファンファーレがピアノで演奏されます。
ライオンの威厳性を表しているのでしょうか?
また、序奏や中間部で出てくる弦楽器やピアノの半音の動きは、ライオンの鳴き声のようにも聞こえます。
おんどりとめんどり
ピアノとヴァイオリンで2匹の鳥の鳴き声の掛け合いが表現されています。
また、時折クラリネットなのでも鳥のような鳴き声が表現されています。
あきらかに2匹以上いるような気がしますが・・・
ロバ
ピアノ2台による激しい音階がひたすら演奏される楽章。
これは一体何を表しているのでしょうか?
ロバのイメージからは想像がつかないピアノの動きになります。
動物の気性の荒さを表現しているのか?はたまたロバに見立てた何かなのでしょうか?
亀
この曲では、弦楽器がオッフェンバックの『天国と地獄』の旋律をわざとゆっくりと演奏されています。
※0:33〜が該当の箇所です。
天国と地獄の曲は、誰でも聴いたことがあるかと思います。
しかし、この曲の旋律がそうであるとは言われてみないと気づけないかもしれません。
テンポの速い曲を、わざと遅く演奏させるあたりにサン=サーンスのセンスが光っています。
象
この曲は動物の謝肉祭の曲の中でも、特によく耳にする曲だと思います。
コントラバスがもそもそと軽やかにワルツを演奏しております。
メロディーにコントラバスを用いるのは、とても珍しいことです。
サン=サーンスの高いセンスがうかがえます。
カンガルー
ピアノの軽やかな動きでカンガルーが飛び回る様子が描かれている曲です。
また、時折動きが止まったかと思えば急に動き出す。
カンガルーのユーモラスな様子を表しているのでしょうか?(楽譜上の4分の3拍子の場面)
水族館
こちらの曲も、動物の謝肉祭の曲の中で人気の高い曲だと思います。
水族館は今までの曲とは打って変わり、かなりフワッとした曲調の曲になります。
水族館の仄暗い雰囲気や、水の動きに合わせてゆらめく光を表しているのかもしれません。
耳の長い登場人物
ヴァイオリンの甲高い音と低音が交互に極端に演奏される楽曲。
これは、サン=サーンスの音楽に嫌味な評価を下していた音楽評論家への皮肉を表していると言われております。
ですが、「耳の長い登場人物」とは何をイメージしているのでしょうか?
想像力を駆り立てられます。
森の奥のカッコウ
ピアノ伴奏の中から、クラリネットによるカッコウの鳴き声がステージの外から聞こえてきます。
楽譜をみると、クラリネットの楽譜にバックステージ(back stage)と指定が書かれている。(動画の冒頭、最上段の楽譜の左側)
これはステージの裏から演奏する特殊な指示になります。
これによって、カッコウが遠くのどこかで鳴いている様子を表現しています。
大きなとりかご
フルートによって細かな旋律が軽やかに演奏されています。
「鳥かご」と題されていますが、表現しているのは鳥そのものではないかと思われます。
鳥が飛び回れるほどの大きな鳥かごなのでしょうか?
ピアニスト
2人のピアニストが練習曲のようなフレーズを演奏しています。
この楽譜には、ピアニストはわざとへたくそに弾きなさいという変わった指示が書かれています。
これは、練習曲ばかりを練習しているピアニストへのサン=サーンスなりの批判なのかもしれません。
そして最後はあやふやなまま、次の曲へと入っていきます。
化石
こちらの曲では、多くの旋律が他の作品から引用されています。
まずメインの旋律は、自身が書いた「死の舞踏」という曲からの旋律を引用しています。
※1:47〜のシロフォン(木琴)
また、「きらきら星」(0:27〜のピアノ)や「月の光に」(0:32〜のクラリネット)などのフランス民謡が組み合わされています。
ちなみに「月の光に」は、ベルト・アッペルモントが作曲した楽曲、「ブリュッセルレクイエム」でも引用されています。
「化石」という題名が付けられていることから、自身の曲や古い民謡などを「時代遅れのもの」として皮肉っているのでしょうか?
白鳥
ピアノ伴奏によるチェロのソロ曲です。
「白鳥」はおそらく、動物の謝肉祭の中で最も有名な曲だと思います。
この曲はサン=サーンスの完全オリジナルの作品だったため、この曲のみが生前出版されていたそうです。
流れるようなピアノ伴奏の上を、チェロが風雅な白鳥のごとく泳ぎ回っています。
終曲
最後の曲では、軽快な主題に乗せて今までの動物たちの旋律が登場します。
終曲で出てくる動物たち
- ライオン
- ロバ
- おんどりとめんどり
- カンガルー
- 耳の長い登場人物
どこでこれらの動物が出てくるのか?
聴いて探してみてください。
全曲通して聴いてみよう!
それでは最後に、動物の謝肉祭を通して聴いてみましょう!
各曲の特徴をとらえることができたでしょうか?
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今回のまとめは次のようになります。
・動物の謝肉祭は個人宅での演奏を想定した曲のため、かなり変わった楽器編成となっている
・他の作曲家の書いた旋律や童謡をパロディー的に使われてる
・パロディーが多すぎたため、生前この曲を出版することをサン=サーンスは認めなかった
動物の謝肉祭は今まで、1曲1曲で聴くことが多かったのではないでしょうか?
ですが曲の要点を押さえることで、どの曲で何が表現されているのかがわかりやすくなっております。
今回の解説で、少しでも音楽鑑賞に興味を持っていただけたらと思います。
いかがだったでしょうか?
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( `Д´)/ジャマタ
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