どうも、nickです。
「ローマの松」の解説の2回目になります。
今回は鑑賞のポイントを、各楽章ごとに解説していきます。
各ポイントを押さえることで、鑑賞がとてもしやすくなります。
前回の記事をご覧になっていない方は、そちらからご覧になってください。
鑑賞のポイント
「ローマの松」鑑賞のポイントは、次の3つになります。
・各楽章の題材となっている風景押さえること。
・場面に合わせて演奏されている楽器を理解する。
・特殊な演奏方法の狙いを理解する。
各楽章の解説の最初に、次の動画の切り抜きとレスピーギ本人による曲の説明を載せておきます。
1楽章「ボルゲーゼ荘の松」
「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る。
この楽章は、ボルゲーゼ公園で遊ぶ子どもたちを描いた楽章になっています。
ホルンの高音、オーボエの軽やかな旋律、ミュートトランペットの高音などで遊んでいる子どもたちの騒がしさが表現されています。
また低音パートの演奏が一切ないのも、この楽章の特徴となっています。
ちなみにトランペットが忙しくて、音も高いので大変な楽章です。(経験談)
2楽章「カタコンベ付近の松」
「カタコンベの入り口に立っている松の木かげで、その深い奥底から悲嘆の聖歌がひびいてくる。そして、それは、荘厳な賛歌のように大気にただよい、しだいに神秘的に消えてゆく。」
カタコンベとはローマ市内に作られた地下墓地のことを言います。
地下墓地の雰囲気を出すためか、演奏は低音パートが主体となっています。
この点は1楽章との対比となっています。
カタコンベはムソルグスキーの「展覧会の絵」でも題材として使用されていました。
オフステージによる演奏効果
2楽章の中間部にはトランペットの長いソロがあるのですが、この演奏はステージの袖裏で行うオフステージという特殊な演奏方法が使われています。(切り抜き動画の2:11あたり)
これによって、目に見えない所から音が聴こえてくるという不思議な効果が得られます。
グレゴリオ聖歌の引用
トランペットのオフステージソロの旋律は、グレゴリオ聖歌のサンクトゥス9番の旋律が引用されています。
グレゴリオ聖歌は、主に9世紀から10世紀にかけてローマ・カトリック教会で用いられていた、単旋律、無伴奏の宗教音楽のことを言います。
カタコンベを題材とした楽章であることから、グレゴリオ聖歌の旋律を引用したのだと思われます。
3楽章「ジャニコロの松」
「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月のあかるい光に遠くくっきりと立っている。夜鶯(ウグイス)が啼いている。」
ジャニコロとはローマ南西部にある丘のことを指しています。
ジャニコロの丘の頂上にはガルバルディ広場があります。
この広場には、19世紀にイタリア統一運動を進め、イタリア王国設立に大きく貢献した国民的英雄として讃えられているジュゼッペ・ガルバルディの銅像が建てられています。
演奏はクラリネットやハープのソロ、弦楽器のアンサンブルがメインになっており、静かでおごそかな夜の様子が演出されています。
オーケストラとレコードの斬新な組み合わせ
3楽章の最終盤では、夜鳴きウグイス(ナイチンゲール)の鳴き声を録音したレコードを流すという場面があります。
(切り抜き動画の5:41あたりから)
ナイチンゲールの音源は、楽譜出版社であるリコルディ社からテープが発売されているが、通常はこの出版社のパート譜の貸し譜といっしょに付いてくるそうです。
しかし、大抵は水笛などで代用してしまいます。
アコースティックの演奏に、録音された音源を被せるというこのアイディアは、当時としてはかなり斬新な試みだったと思われます。
4楽章「アッピア街道の松」
「アッピア街道の霧深い夜あけ。不思議な風景を見まもっている離れた松。果てしない足音の静かな休みないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮べる。トランペットがひびき、新しく昇る太陽の響きの中で、執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく。」
アッピア街道とは紀元前に作られた、古代ローマ時代に主要都市を結ぶように作られた道路である「ローマ街道」のうちの1つになります。
4楽章はとても静かに始まり、後半になるにつれて金管楽器が鳴り響き、だんだんと曲が盛り上がっていく構成になっています。
これは、軍隊の行進が遠くからだんだん近づいてくる様子を表現しているのだと思われます。
バンダ演奏について
4楽章の後半からはトランペットとトロンボーンがバンダと呼ばれる演奏方法をとっています。
バンダとは、オーケストラなどで本来の舞台上の編成とは別に、離れた位置で別働隊として演奏することです。
バンダは主に舞台裏や花道、客席などで演奏されます。
次の動画では、ステージ後ろのパイプオルガンのある場所からバンダ演奏を行っています。
(バンダ隊の演奏は13:03ごろから始まります。)
バンダ隊にはトランペットやトロンボーンなどの金管楽器が使われることが多いため、派手な演出をしたい時に使われます。
カラヤンの演奏ではバンダ隊が映っていないのが残念です・・
全楽章通して聴いてみよう!
それでは改めてローマの松を通して聴いてみましょう!
各楽章の場面や特殊な奏法など、感じ取れたでしょうか?
まとめ
今回のまとめは次のようになります。
・各楽章の題材となっている風景は、ローマのにちなんだ場所が題材となっている。
・特殊な演奏方法がふんだんに使われており、それぞれの奏法が効果的に楽曲で使われている。
・生のオーケストラにレコードの録音を被せるという、当時としては斬新なアイディアが採用されている。
今まで聴いてきた楽曲に比べるとマイナーな楽曲であるローマの松ですが、要点を押さえてしまえば他の楽曲よりも聴きやすいと思います。
ローマの松は、授業でもっと取り扱われてもいいのではなかとnickは考えています。
また、他のローマ3部作(噴水、祭り)もたいへん聴きやすい楽曲ですので、聴いてみてください。
参考までに動画を添付しておきます。
・ローマの噴水
・ローマの祭り
※他の音楽鑑賞の解説はこちらからどうぞ
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